目が覚めて久々に見えた天井に大きなため息を漏らした。早く起きなきゃ。ゆっくりと体を起こそうとするとなにか体に重くのしかかっているのに気付く。よく見ると子供たちが私の体を枕にすやすやと眠っていた。

「起きた?」
「へっ?!」

しっ。まだこの子たちねてるから。そういわれて慌てて口を押える。なんで先輩がここに。そう驚いていると昨日の出来事覚えてないの?と聞かれあやふやにしか。と応えると困った顔をされて頭をやさしくなでられた。検査して問題なければ今日退院。問題あれば残ってもらうから。おとなしくしてなよ。そういって先輩はナースコールを押すとそのまま部屋を出ていった。ああ、そうだ。先輩が家に来て、なんだか体に力が入らなくなって・・・。
しばらくすると看護師さんが来ていろいろ検査をすることになってそれが済んで結果が出た夕方には退院の許可が下りた。荷物を簡単にまとめると迎えに来てくれた先輩の車に乗り込んで家族3人で話をしながらだんだんとうとうとし始める子供たちにつられてわたしもうとうとし始める。それに気づいた先輩がついたら起こしてあげるよ。と言ってくれたのでお言葉に甘えて久々にゆっくり眠った。
目を覚ますとしらない天井が見える。どこだろうか。ゆっくりと体を起こすと子供たちのにぎやかな声が聞こえた。りょうちゃんそれゆうかの!はいはい。洋亮はこっちでいい?おう!ありがとうりょうちゃん!ありがとりょうにぃ!くす。どういたしまして。ほら、早くお母さんのところいっといで。晩御飯作るからそれまで好きにしてなよ。あ、お母さん無理やり起こしたらだめだからね。うん!
しばらくすると部屋の扉が開いて子供たちが入ってくる。あ。母さん起きてた。りょうにぃ母ちゃんおきてたよ!その声からしばらくすると扉から先輩が顔を出して起きたんだ。調子はどう?と聞かれ普通です。と返す。そのまえにここどこですか?俺の家。あの、なんで私ここに?今日からお前はここで暮らすから。はい?正しくはお前ら、かな。ね。優夏、洋亮。と先輩が二人にいうとうん!と二人とも元気に返事を返す。ちょっと待ってください。なんで私が。これ以上無理するとその体ほんとに治らなくなるよ。医者がね、そういってた。身に覚えあるんじゃない?その言葉を聞いて返す言葉がなかった。仕事先には勝手に俺が連絡した。勝手だけどやめさせてもらったよ。そんなっ。これからは俺が3人を養う。お前がちゃんと元気になって、生活が安定できる貯金がたまるまで。なんでそこまで・・・・。いったろ?俺はお前の先輩なんだから。大事な後輩が困ってたら助けるのなんて当たり前だよ。さ、いいこに晩御飯まで寝てなよ。そういうと先輩は姿を消す。
子供たちは絵本などを広げて楽しそうにしていた。ねぇ、優夏。洋亮。ほんとうにここに引っ越してもいいの?いいよ。だってね、ここにいたらりょうちゃんが母さんのことまもってくれるし。ゆうかとようのことだいじっていってくれたよ。母ちゃんもうむりしなくていいって!りょうにぃがまもってくれるって!二人は無邪気に嬉しそうに笑う。その言葉に胸が痛む。こんな幼い子供たちにまで心配をかけていたのだ。自分でも無理な生活をしていた自覚はあった。けど、そんな風に思っているなんて思いもしなかった。
ご飯だと呼ばれてリビングに行くとわたしには食べやすく、消化の良さそうなものが用意されていた。わぁ!すごい!大きな声をあげて目を輝かせる子供たちをみるとやっぱり胸が痛む。あんな無理な生活をさせてしまったこと。やっぱりわたしには、子供を産む資格なんてなかったんだ。
泣きそうになるとそれに気づいた子供たちが不安げな顔をする。ごめんね。そう二人に謝った。わたしのわがままで生まれて、苦しい生活ばかりさせて、悲しい思いばかりさせて。ぼろぼろこぼれてくる涙を必死に止めようとしてもなかなかとまらない。仕方ないと先輩は立ち上がってわたしを一度立たせてソファーに座り子供あやすように膝にのせられたまま背中をリズムよく叩かれた。
「お前は十分頑張ってるよ。もう、十分だ」
「ふぇっ、せんぱっ」
「俺はあいつにはなれないけど、あいつの分までお前たちのこと見守り続けるから」
「わた、し」
「わかってる。ごめんね、俺が何も知らずに適当なこといって傷つけたせいだね」
ちがうのだ。ちゃんとどこかではわかってた。けど認めたくなかったのだ。本当はしんどくて、辛くて仕方なかった。いつまで頑張れるのかも不安で、先も見えなかったのだ。だからこそ今やっと安心してほっとしてる。
「もう、一人で頑張らなくていいんだからさ」
ゆっくりお休み。その声を聞きながらゆっくりと意識を飛ばした。


消えた苦しみ

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