変わらないのは俺のためじゃない
「練習試合・・・?この季節に・・・?」
「そう。よかったら見にきてください」
あいつの大ファンだと公言していた部員が今度の練習試合の誘いをするとあいつは少し悩むそぶりを見せていいよ。と了承する。俺はもはやあいつのすることに口出しする気はない。俺には関係ない。もはや遠い世界の人間だ。そのうち飽きるだろ。あいつ飽きっぽいし。そう思うことにした。それよりなにより俺には進展したい女がいるんだから。
「杞紗今週末なんか用事あるか?」
「特にないけど?」
「じゃぁさ、試合見にこね?練習試合だけど」
「楽しそう。絶対行くね。お弁当、みんなで食べれるようにたくさん作ってくる」
まじかよ。いいのかこの展開。うれしすぎてにやける。楽しみにしてるというと杞紗は照れ臭そうに笑った。かわいい。素直にそう思う。口にはできねぇけど。気恥ずかしくなって視線を変えると小絵とばっちりと目が合った。にこっと笑ってあいつはどこかに消えていく。なんだあいつ?
試合の日、杞紗は言ってた通りうまそうな弁当を持ってきてくれる。それを俺と御幸と小絵の4人で食うことになる。予想はしてたけど二人きりじゃねーんだよな。まぁ、弁当うめぇし、いいか。
「saeは料理とかするの?」
「あんまり得意じゃないかなぁ。でもねオムライスは誰よりもうまくできるからね!すっごく自信あるんだ」
「まじで?今度作ってよ。」
「じゃぁ、今日ホームラン打って見せてよ。わたし生のホームラン見てみたい」
「高くついたな」
俺と杞紗をそっちのけにいつの間にか小絵と御幸は仲良くなり、連絡先も交換しているらしい。そして二人で楽しそうに話していた。小絵が男と普通に話すのって珍しいな。ガキの頃、いつも小絵はびくびくしてて俺以外とまともに口きいてなかった。そんなのガキの頃の話か。
「そうだ。saeちゃん私との連絡先交換してよ!」
「はぁ?何言ってんだよ杞紗」
「いいじゃん。倉持君も交換してもらおうよ」
「いや、俺はいらねぇけど」
そういってもその場の空気というやつでなぜか俺ら四人で連絡先を交換することになった。当たり前だが小絵の連絡先は人に絶対に教えないでと頼まれる。つかこのアドレス、昔のままじゃん。変えてなかったのかよ。なんて思っているとなぜか小絵はずっと携帯を見つめていた。そしてふふ。と嬉しそうに笑い大事にする。と幸せそうな顔をして言う。その顔はあのころと変わらない、ガキの頃のまんまのあどけない、素顔。あのころ、俺が好きだと思った小絵がそこにいた。ああくそ、思い出したくもねぇこと思い出した。こんなのどうせ、どこでだってするんだよ。俺だけが特別なんてのは思い上がりでしかなかったんだ。


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