くらくらまわる
一コマの空きをどうやってつぶすかと考えていた時倉持君!とかわいらしい声が俺を呼ぶ。俺は思わずにやけそうになるのを必死に抑えて普通の顔をして振り返った。かっこつけてさも振り返ったときにだれか分かりました風を装い杞紗、お前か。なんて言ってみる。
よかった。やっと見つかった。会えてよかった。なんてかわいいことを言われやべぇ。と思っていると杞紗の後ろからひょっこり知った顔が飛び出してきた。うわっ。と思わず叫ぶ。
「な、なんでお前がこいつと」
「この子がね、倉持君捜してたから」
それにあたしも会いたくて。そういってにっこりと笑みを向けられれば小絵を怒鳴りつけることもできなかった。ニコニコと笑みを向けられると照れ臭くて視線をそらしてしまう。その視線が小絵とぶつかり顔をしかめた。で、何の用事だよ。ときくと行きたい場所があるの。といって鞄から一つのチラシを取り出す。それはパフェの店だ。しかもカップル限定と書いてある。
「なんで俺がお前に付き合わなきゃいけねぇんだよ?」
「ダブルデート、しましょ!洋一と杞紗ちゃんとあと、誰か野球部の人を誘えばいいわ」
「だから、なんでそんなものに」
「行ったことないんだもん。行ってみたい」
知るかと一刀両断しようとするといいじゃない。楽しそう。と杞紗が言い出した。止める前に小絵はそれにのっかかり、野球部の誰か誘ってくるー!と走り去る。明日の放課後、部活ないって知ってるんだからその時絶対よー!なんて言い逃げされた。なんでこんなことになるんだよ。何が悲しくて元カノと今片思いをしている相手と出かけなきゃなんねぇんだよ。思わず大きなため息をついた。
次の日の放課後、集合場所に現れた野球部というのは沢村だった。まさかの人物に驚く。てっきり御幸あたりが来ると思っていた。そういうとあみだくじをした結果沢村だったらしい。なぜかいつのまにかすっかり打ち解けた二人は仲好く並んでワイワイと騒ぐ。勝手にうろちょろばっかりして手のかかる子供のようだ。手のかかる子供を見てる父親が自分とするなら、母親って・・・・なんて妄想してしまう程度にはちょっと浮かれてしまう。なにせ一応これは杞紗と初デートなのだ。俺的に。
ここ!このお店!うおー!おいしそう!沢村君の分は私がおごるからね。え、そ、それは悪いっす。いいのいいの。年上だし、社会人様ですから。ああ、洋一は自腹ね。ついでに杞紗ちゃんの分も払ってよね。にしし。と悪い笑みをしてそのまま店内にかけこんでいく。なんなんだあいつ。てっきり俺にべったりしてくるかと思った。なのに俺には、一切近寄ってすら来ない。なんか拍子抜けだ。
メニューを広げてあれもこれも食べたいと騒ぐ沢村と小絵はほんとに幼いカップルのようだった。俺と杞紗は中くらいのパフェにきめ、先に注文する。そのあと小絵が早口言葉のように注文する。どんだけお前食うんだよ!食えねぇだろ!思わずお前小食だろ!と突っ込むとキョトンとした顔をされ、何のために野球部を連れてきたと思ってるの?と言われた。おまえこそ野球部をなんだと思ってる。机いっぱいに並べたパフェやポテトやらは結局俺と沢村が必死になって処理することになる。杞紗も少しずつつまんではいたが、最後に俺と沢村が食べきった。女二人はパンパンで苦しむ俺らをおかしそうに笑い、腹を抱えている。
「あー、おかし」
「てめぇ・・・・」
「ちょっと失礼するわね」
そういって小絵は突然立ち上がる。俺がどうしたときくとそれって野暮よ?と鼻で笑われた。ああ、こいつむかつく。心配して損した。戻ってくると小絵は沢村と杞紗の手を引いてさぁ次行くわよ!と店を出ていく。慌てて追いかけて店を出た。あとあと気づいたが普通は会計もしてないので止められるはずだ。なのに出ても何も言われなかったってことはきっとあいつがいつの間にか支払いを済ませていたんだろう。そのことに気づけたのは散々あいつに付き合わされて疲れ果て、横になって眠りにつく少し前だった。


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