捨てられたのは自分だった
次の日、何人かの目撃者に昨日の出来事を聞かれたが何も答えずにとにかく落ち着くのを待った。何も言うことなんてねぇし。御幸はそれが落ち着いてからこっそりとあの子のことは一応誰にも言ってねぇから。とだけ言いに来た。一応何かは察してくれたらしい。やっと落ち着いた。と思ったときまたあいつは来た。
「洋一やっぱり足早いんだね」
野球部の練習が終わって汗を拭いているときあいつは突然現れた。なんでこんなとこに?!慌ててどこかに追いやろうとしたときあれ。あの子ってと一人の部員がこいつの正体を口にした。
「saeちゃん・・・?」
「・・・・。はい、saeです」
「え、うわ、え・・・」
そいつはほんとにこいつのファンだったらしく顔を真っ赤にしていつも応援してます!大好きです!と叫ぶ。すると小絵は驚いてきょとんとしていたがすぐにサングラスを外して服にひっかけ、その部員の手を握りありがとうとお礼を言った。それだけで顔を真っ赤にして部員は泣きそうになり、周りの部員が茶化しに入る。
「うるせ!お前らはsaeの曲を聞いたことないからそんなこと言えるんだよ!」
「俺も好きだけどお前みたいに泣くほどじゃねぇわ」
「あー!泣いてねぇよ!」
その騒がしさに小絵は笑い、自分のかぶっていた帽子を脱ぐと近くにいた女子マネが持っていたマジックペンですらすらと何かを書き込んでいく。そしてキャップをかぶしてペンをマネに返すと先ほどの部員の前まで行きよかったら、といってその帽子を渡す。それには芸能人らしいサインがかかれていた。それを見てまた男は号泣し、家宝にしますと泣き叫んだ。
変装用の帽子をあげたせいで正体がバレやすくなってるくせに飄々と好き勝手歩き回るのを見かねて俺は自分の使っていない帽子をしかたなくあげ、二度と来るなと学校の外に追い出した。こんなとこ、あいつに見られでもしたら。誤解されたらどうする。小絵は何度か振り返って俺のほうを見て最後にまたね。と笑って走り去る。だから、もう二度とくんなっつの。そう思いながら引き返す。
「お前、あの子とどんな関係?」
「御幸、お前聞かねーんじゃなかったのかよ」
「ちゃかすの好きだけどなんか事情ありげに見えたから黙っとこうと思ったけど、結構知れ渡ってるし、もう俺がだまってる必要ねぇかなって」
「ただの昔馴染みだよ。まぁ、元カノだ」
「は?まじで?」
でもあっちはお前のことまだ好きっぽいけどな。と言われイライラする。あいつが俺のこと好き?んなわけあるかよ。あったとしても御免だ。二股掛けかけるような女なんか。俺たちは中学3年の時付き合い始めた。俺がこっち来ることになって遠距離になった高校1年の時、突然シンガーソングライターとしてあいつがデビューすることになった。そんな話全く知らなかった。たしかに歌うのが好きだったってのは覚えてたけどそんな話一度も出なかったのにテレビで見たとき初めて知った。話を聞けば気恥ずかしくて言えなかったとかなんとか。まぁそれはたいした問題じゃない。そのあと、高2の冬、あいつは突然大物芸能人との熱愛が報道された。そしてあいつは自分のその口でテレビカメラの前でそのことを肯定したんだ。俺というものがありあがら、違う男とも関係を持ってたなんて笑い話にもなんねぇよ。ニュースで何を言われたって俺は信じなかった。けどあいつの口から出た言葉はそんな俺を裏切った。
「だから一方的に別れのメールを送って、俺は終わりにしたんだ」
「なのにその相手はわかれたつもりがないとかいってるとか」
「そんなとこだ。わかっただろ?これ以上変なちゃちいれたら、キレるからな」
俺がそういうと御幸はわかってるわかってると笑い、歩き出す。俺もそのあとを追うように寮に戻った。


捨てられたのは自分だった

prev / next
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -