笑っていてほしくて
あの日から俺は自分からあいつにメールを送るようになった。何気ないことを送ってその返事が来るとその日はほっと胸をなでおろす。あの日の言葉がずっと俺の中で何度も渦巻いて不安にさせる。俺がいなきゃ、死んじまいそうで怖かった。今だけでも、少し落ち着くまで。そう自分に言い聞かせて今日もメールを送る。
大学に来るときはなるべく会うようにしてるし、あれからのことも聞いてる。楽しそうに笑ってるとこを見ているとあの日の出来事が、あの時のあいつがウソのように感じた。消えるわけねぇか。このあほみたいなやつ、突然死んじまうわけないよな。
「洋一さ」
「ん?」
「最近よく、saeちゃんといるよね」
「あー、この前のこともあったからな。落ち着くまでな」
「・・・そっか」
杞紗にしては歯切れが悪い返事にどうした?ときいても何でもないよって言われて結局わからなかった。とにかくあらぬ誤解だけはないようにそういう目では見てないと口が酸っぱくなるほどいって、その誤解だけはないようにした。
「あのね洋一、今度のsaeちゃんと遊ぶ約束してた日さ、私いけなくなったんだよね」
「あー、そっか。わかった」
「洋一は、行ってくる?」
「ああ。別に用事ねぇしな」
「・・・・そう」
「杞紗?」
なんかいつもと違う感じに違和感を持ったがその後、ん?と言われると別に何か確証があるわけでもないから何も言えずに何でもね。と言って話を切り替える。あの講義はどうだったかとか次提出の課題の話とか大学生らしい話題で盛り上がって普通にギャーギャー言って騒いでだ。
「そういえばsaeちゃん後藤くんに言い寄られてるらしいよ」
「は?!」
「大学の中での五本の指に入るっていわれてるイケメンから猛アタック受けてるんだって。さすがだよね」
「後藤って、あの遊び人の後藤だろ?!何やってんだよあのバカ。そんな奴さっさと振り払えっての」
噂をすればなんとやらってやつで目の前で小絵のことを追いかけまわしている後藤がいた。杞紗に悪い!と一言謝って走って間に入って後藤を止める。少し口で言いあったが遊びまわってる話を出したらすぐに引いた。小絵はそのことにおー。と拍手して喜ぶ。そのあと俺が説教を始めると聞こえないと言って顔を背けて話を聞こうともしない。この野郎。
「あ、杞紗ちゃん!いいところにいた」
少し離れたところにいる杞紗を見つけると小絵がそっちに走っていってしまう。ったく、ちょっとは警戒しろよ。それでも楽しそうに笑ってるところを見るとやっぱり安心してしまう。このままでいられればいいな。


笑っていてほしくて

prev / next
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -