沢村君というひと

沢村君は最近元気のないことが多い。だから私は飴玉を常備するようになったのだ。へこんでる背中を見つけるととりあえず投げつける。最初はやさしくしていたのもだんだんといらだって強く投げつけたりもするようになった。そして投げたのが自分だとは絶対に悟らせなかった。金丸君に最近飴が降ってくるんだと相談してるのを横目に机の上に伏せて寝る。金丸君余計なこと言うなよ。

「かずー。かずきちー」
「へ?みょうじ?」
「あれ、沢村君」

2年生の教室を除きこえをかけたらなぜか沢村君がいた。なんでここに。と首をかしげるとそういえば一也は野球部だったと思いだす。沢村君は驚いた顔をして固まったままだ。って、今それにかまってる余裕ないんだよね。一也体操服のジャージ貸して。上だけ。なに?忘れたの?貸した子がどろでびちょびちょにしちゃってさ、きれないんだよ。とりあえず貸して!昼休み終わっちゃう!ご飯食べてないのに。ここで食ってけばいいじゃん。パン分けてやるし。その前に沢村となんで知り合いなの?恋人だもんわたしたち。そう嘘をつくと一也は飲んでいたお茶でむせ返った。冗談だって。とけらけら笑うと似てるな。と沢村君が言うので血のつながりなんかこの人とないからね。とあらぬ誤解を受けてそうなので否定しておいた。御幸一也はわたしの幼馴染である。

「御幸に幼馴染がいたなんて初耳だわ俺」
「あんまり人に話したりしてないですからね。中学時代ラブレター持たされたことあったんで」
「そんときに顔変形しろって言われたな、そういや」

一言余計なことを言いおって。と思ったら一也の唯一の友人(らしきひと)はヒャハハ。と笑っている。ああ、同じタイプの人間か。よかったよかった。沢村君はどうしてここに?と聞くと練習のことでちょっと。と言葉を濁される。ずいっと顔を近づけてまっすぐ沢村君の目をみる。うん。どうやら沢村君が復活したらしい。元気になったね。というと自分のすることがわかったからな。といって沢村君はにかっとわらう。うん、この顔のほうがあっている。

「そういや俺最近よく飴玉降ってくるんっすよ」
「夢と現実ごちゃまぜになってるだけだろ」
「いやほんとっすよ!ほら!今朝も!」

そういって沢村君はポケットに今朝私がまだ復活していないと思って投げつけた飴を取り出す。その飴玉を見ると一也はにやにやと笑い私を見てくる。やっぱりばれたか。何せこれは私のお気に入りの飴なのだ。

「それたぶんお前がふてくされてるから持ち主さんがカツ入れてくれたんだよ」
「いや普通にうまいんで一言お礼いいただけっすっけど。」

でもツチノコ見たく姿をきれいに隠すんだよな。うーん。唸りだした沢村君にまた一也はにやにやとする。かくれんぼは私の数少ないの得意分野だ。そのだらしのない顔やめてくれないかな。すねけってやりたい。ほんとに。



一年目、夏は去り、前を見る秋
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