No.4 | ナノ

休日、あいつが作っていたアルバムをすべて見直していた。高校の時のやつ。大学の時のやつ。飲み会だったり、たまにできたデートの写真だったり。そういえばあいつは形に残すのを好んでた。それをいつまでもいとおしげに見つめていた。きっとそれがあいつにとっての支えだったんだろう。おそろいのマグカップ。おそろいの歯ブラシ。そのすべてを壊し、捨てたということはその過去すらも捨てようということなのだろうか。

後輩のところにはすでに話を付けに行ってきた。実はあの熱愛報道のことを後輩はしていてわざと写真を撮られたのだといった。いつまでもどっちつかずな俺のために、俺の気持ちを明るみにさせるために。ずっと俺があいつだけを好きだってほんとは後輩は知っていたんだ。それでも気づかないふりをした。だって、そんなの言ってしまえば終わりを迎えるとわかっていたからだ。そんなにすぐに吹っ切れれるほど簡単な思いじゃなかったのだ。それでも別れる時まで一生懸命笑ってくれた。俺が好きだといったその笑顔で
あれから4年。あいつのことはまだ見つからない。そんなに世界は狭くないってことだろう。どれだけ探しても見つからない。ときには探偵などを使ってみたけどそれも不発に終わった。なにせ情報が少なすぎたのだ。

アルバムを一冊一冊見ているとその間に薄い何かが紛れ込んでるのがあった。なんだろうと引き出して表紙を見るとNo.4とだけ書かれている。中を広げると驚いて目を見開いた。そこにうつっているのはどれも俺だった。新聞の切り抜き、雑誌の切り抜き。いろいろあった。ネットから印刷したであろう写真まで。その一枚一枚に日付とコメントまで書かれていた。

5月7日シーズンがすでにやってきた。毎日忙しそう。でもこの写真を見る限り楽しいんだろう。にやりと笑ってる顔嫌いじゃないのだ。本人には絶対言わないけどね。色気あるよね〜。7月29日もうすぐで夏の甲子園がある。気になってるのかな?最近はほんとに忙しいみたいだね。なかなか会えないけど頑張れ御幸!応援してるぞ!でもその決め顔はむかつく。8月13日。甲子園みてたら懐かしいころを思い出した。ああ、あのころの御幸はあんなに無邪気でかわいかったのに。いったいどうしてこんな憎たらしい奴になったんだ。高校生の雑誌の切り抜きと比べて改めて思う。あのころの御幸かえってこい。10月22日もうすぐでシーズンオフだ。やっと落ち着いて会えるようになるかな?楽しみだなぁ。普段できない分どんと甘えてやりたい。あとこの雑誌に載ってるあまーいセリフとやらを本人の前で読み上げてやろう。こんなこっぱずかしいセリフ私なら言えないわ。11月8日今回のホームランきれいな放物線を描いてた。野球でこんなにきれいだと思ったのは初めてだ。12月29日年末は忙しいらしく、今年会えるのは今日が最後だといわれた。それでもいいから会いたいといってあったのはいいものの、久々のイケメンの顔はきつい。眩しい。持ってきてくれた自分の雑誌を馬鹿にしながらもお風呂言ってる間にしっかり見て切り抜きしてはりはりなう。また御幸のこと一つ知った。

楽しそうに書かれているノート。俺の切り抜きやら写真やらが張って日記のようなコメントのようなものが添えてある。これは、あいつがずっと作ってくれてたんだろうか。こんなのずいぶんと前の記事だ。あいつ。こんなことしてくれてたのか。それに確かこの時・・・・、ほんとは後輩と会う約束があって年末最後を一緒にいられなかったんだ。寂しそうに笑う姿を今でも覚えてる。ああ、ほんとにおれはひどく愛されていたのに・・・なのにそれに気づけず、一人不安になって・・・

「だっせぇ・・・。マジでおれダサすぎ」

倉持の言う通り俺に弁明も何もない。すでに幸せをつかんでいたとしたらそれを邪魔する権利はない。むしろ、今もう一度会うことだってほんとは・・。それでも会いたい。話がしたい。もう一度やり直したい。今度は絶対同じことしねぇ。お前のことちゃんと信じるから。お前がもう一度信じてくれるまで、待つよ。だから、もっかい会いたい。

めくればめくるほど溢れ出す思い出たちは今の俺にゆいつあいつとの過去を証明させるもの。あいつと俺が思いあっていた唯一の証拠。俺の手帳に挟まっている一枚だけ塗りつぶされていないあいつのうつる写真では、あいつは幸せそうに笑っていた。なぁ、今お前、誰といる?

全てが終わった綴られていた恋の歌

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