No.4 | ナノ

泣きそうな御幸の顔をまっすぐ見たのはもしかして初めてかな。いつも目をそらしてた。大学生のころも、高校のころも、まっすぐな君の気持ちから。怖かったんだ。先生が好きだった自分が過去になったようにこの感情も過去になってしまうことが。
「御幸が好きだって思った私ってどんなわたし?」
「最初に好きだなって思ったのはヒーローみたいなとこ。そのあとは馬鹿みたいに一途なとこ。んで泣き虫なとこ。かわいくて仕方なかった」
「私そんなかわいくないよ。やきもちだって人一倍やくし、強がりだし、甘えるの下手だし、気持ちを伝えるのだって上手にできない」
「しってる。強がりなところも、甘えるの下手なところも、あいつと俺が一緒にいるとき嫉妬してたことも」
全部知ってて、わざとやった。わざと傷つけた。俺はそんな最低な男だよ。けど好きだ。好きで好きで、どうしようもなく好きで、ああ、ほんとに止まらない。野球以外で、何かにこんなに心動かされるなんて思ってなかった。こんな情けない姿さらしてばっかなんて思ってなかった。
そういいながら目からぼろぼろと涙をこぼす御幸にわたしは手を伸ばせない。ううん、伸ばさない。そんなに思うなら捕まえて見せてよ。自分で、私のことを。そしたらもう一度つかまって二度とそこから出ないからもう一度、捕まえてよ。わたしのこと
「私たちって結構『4』っていう数字に縁があるんだよ」
四番バッター。404号室っていう二人の部屋。四年目に二股掛けられてその四年後に別れた。四年後の再開。見てしまったかな。あなたの部屋に忘れてきてしまった四番目のノート。ほんとできすぎてるくらい。何でもないことかもしれないけど結構意識してた。だから、最後のかけもこの数字がいいなって思ったの。
「四年、またお別れしよ。」
「なんだ・・・それ・・・」
「ずっと我儘聞いてきたんだからこの我儘は受け入れて。」
「四年別れてそのあと再開したらまた恋人に戻ってくれんのか?」
「さぁ。わたしか御幸に好きな人ができるかもしれない。その間に」
「だったらいやだ。絶対の約束がないならっ」
「もし、御幸が四年後もその間一度もあってない私を好きでいてくれたら、もう一度信じるって約束する。わたしは御幸を好きでいる自信あるから」
御幸はないの?と聞くとあるに決まってるだろ!と叫ばれた。そっか。よかった。四年したらここにまた来るね。そうだな。今と同じ時間にこの場所で御幸を待ってる。来なくてもいいよ。それは仕方ないってあきらめるから。でももし好きでいたら来て。その時捕まえて。もう一度。
御幸はそっとわたしを抱きしめる。そしてそっと放す。わかった。お前の我儘言ってほしかったっていったのは俺だしな。だからそのわがままきいてやる。でも四年後は容赦しないからな。もっとすごい有名選手になって、お前を迎えに来る。そんで今からいうことと同じセリフを言ってやるから


「その時、結婚してください」

その言葉に涙がこぼれた。今だけの言葉でもいい。一生聞くことのないセリフだと思ってた。君から。もし四年後、君がここに来なくても、それでもわたしはその言葉だけで救われるから。知ってた?『四』ってね、実はね、幸せの番号だったんだよ。おしあわせって、数字なんだ。

「わたしも同じこと答えるよ。よろこんで」



それから四季が何度も移り行く。四年後、柔らかな風が吹き、髪を耳にかける。耳元でささやかれた言葉にあの時と同じことを返し、そっとやさしいぬくもりに自分から自分のぬくもりを重ねた。数日後お茶の間を騒がせる一つのニュースがかけまわった。


No.4 HAPPYEND
(I came to pick you up as promised.Please marry me.)
(Thank you for coming to pick me up.I get on the invitation with pleasure.)

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