No.4 | ナノ


朝から待ち合わせをして私が行きたいと思ったところに二人でまわっていく。ありすぎて全部なんてまわれないけど、あのころできなかったことが今かなった。今かなっても意味なんてないのに。そう思ってしまう私はひどい女なんだろうな。でもそうじゃないか。あのころ好きだったとしても今はまた違うのだ。だから、だからもうこんなのやめたい。そう何度も思うと同時に苦しいくらいこの時間が幸せだと思った。でも、それももう終わり。魔法の時間は終わったんだ。

「じゃ、そろそろわたし帰らないと」
「そう、だな。」

すっかり日は暮れ一緒にカフェで夕食まで食べた。これ以上はいられない。ここが潮時だ。送る。という御幸の申し出をきりがないから。と断る。馬鹿みたいだね。こんなにも好きなのに私は意地を張ってもう一度踏み出す勇気を持てないよ。きっと後悔すると思う。いつかあなたが幸せになるのを見たとき。それでも怖いんだ。もう一度、あの場所に戻るのは。あそこは、幸せすぎた。

「たくさん、傷つけてほんとにごめん。」
「いいよ。もう、過ぎたことだもの」
「お前が選んだんだ。俺よりは何十倍も幸せにしてくれる。幸せになれよ」
「うん。ありがとう」

そこにいるのが御幸じゃないなら、きっとわたしは本当に幸せになることなんてできないよ。けど、精一杯の強がりだ。これは。ごめんね、御幸。もう一度勇気を持てなくて。ごめんね。こんな私のことなんかさっさと忘れてちゃんとあなたは幸せになってね。たまにさ、思い出してくれるくらいでいいから。どうか忘れないでね。わたしとの時間。なんて、矛盾してるな。

「じゃぁ、ね」
「おう。元気でな」

ばいばい。と手を振って背を向ける。ゆっくりと歩きだし、バクバクと跳ねている心臓を感じながら知らないふりをして足を動かす。うるさいうるさい!静まってよ!!もう、もうやだって、もう傷つきたくないって思ったんじゃないの!だからやめようって、決めたんじゃない。なのにっ・・・・だめだ。ばっと振り返る。御幸!そう口が動いた。けど、振り向いたそこにあの人はいない。誰もいないまるで一緒にいたのがウソだったんじゃないって思える。いつもいつもそうだ、わたし。遅すぎるんだよ、大事なことに気づくのに。何年も何年も忘れられなかった人を忘れれるわけないのに。ほんと、馬鹿だな。

「好きだよっ・・・・御幸・・・・」

あのころに戻りたい。



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