05

自分の家に戻ると家の前にもなが座り込んでいた。やっと帰って来たか。そういって大きくため息を吐いてゆっくりと立ち上がる。泣いたんだ。なんて図星を突かれて妙なプライドからうるせぇ。と言ってしまう。だけどもなはそんなこと気にせずに家に入ろ。とかまるで自分の家のように堂々と言ってのけた。ヒャハ。ほんとこいつ大物だわ。さすが俺や御幸と長く付き合っていけるわけだ。鍵を開けてふたりして家に入るともなは持っていたスーパーの袋を広げて俺の家のキッチンに立つ。適当に作るから。なんて決定事項の言い方をする。別にいまさらどうとは思わはない。おう。と答え俺はソファーに座る。ささっともなは調理を済ませ俺と自分の分の晩飯を用意する。そしてソファーの前にある小さな机の上にごとんと次々に食器を並べていく。見た目からやっぱコイツのはうまいな。なんつうか、栄養もしっかりバランス取れそうだし、色もいろいろあって華やかだ。いつもこれを食ってる御幸が腹立たしい。
友夢ちゃんと少しは話せた?と聞かれ首を横のフル。大した話は何もできなかった。結局ほとんどお前の話ばっか。と俺が言えばなんだそりゃ。といってもなは笑う。ああ、ほんとだっせぇよな。なんて俺が言うともなは困ったような顔をする。ダメだな。肝心な時に弱気になっちまってる。俺。今日実は御幸と喧嘩してきちゃったの。は?唐突に言われたことに一瞬理解が遅れた。ああ、喧嘩か。てかまたかよ。なんて俺が言うともなはまぁね。嗤笑する。あのね、私たちってまだ付き合ってそんなたってなくてさ。しかもお互い慣れてないことが多いの。どこまでしていいかとか、手探りでさがし合ってるって感じなの。恋人としてのやっていい範囲を。倉持も同じことなんじゃないの?今からゆっくり手探りで探して、たぐり寄せればいいのよ。ゆゆちゃんとの関係を。
もなに言われたことばがなんだか胸にしみた。そうだな。でも今からで間に合うか?もう随分ひらいちまってんだよ。俺がそう言うともなは俺の背中をバシっと強く叩いた。何を言ってるのよ。瞬足の脚を持つ倉持選手が!そんなもの、あなたには大した距離じゃないわ。すぐに追いつけるよ。にかっと無邪気な笑みを向けられれば思わず涙が出そうになった。弱気になるな。いつもの倉持なら大丈夫!あのいつもの独特な笑い方でいいのよ。ヒャハって。くすくすと笑うもなの頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。うるせぇ。精一杯のつよがりの言葉。きっとそれすらももなはわかってるだろう。けど何も言わないのは・・・・。
「そういえば倉持の家に行くっていって飛び出してきたから多分後で倉持文句言われると思うけど頑張ってね」
「今すぐ出てけ」
それから結局おれがもなの愚痴を聞くことになる。でもそれはこいつが話を変えようとしてわざとしてるのだとわかってる。だからこそ俺だって本気で自分の意見をぶつけるし、こいつの意見だって聞く。そんな俺だからこいつだってきっと頼ってくれんだよな。ダメな俺も、馬鹿な俺も知ってても。ちゃんと俺にもあるいいところってやつを、こいつはわかっててくれてんだよな。あの頃は家族以外じゃゆゆだけだったのによ。やっぱ、こいつと出会えてよかった。改めてそう思った


意外と身近でもいいのです

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