今、

25
そういえば洋一くんがどうしてここに?ああ、それはな。そういって俺は少し前のことを思い出す。突然もなから電話がかかってきて今すぐゆゆのところに行けと言われた。意味がわからなかったがただ今行かないとずっと後悔するから。だから行け。今なら会社の近くにいるはずだから。そう言われていそいでゆゆの会社まで行くとちょうど会社の近くに男とカフェに入っていくのが見えた。
あれが彼氏か。なぜか異常なくらい冷静にそう理解した。そのまま帰るかも一瞬迷ったが俺はとりあえず近くで見守ることにした。少し離れた席に座って様子を伺いながら昔のことを思い出していた。
ふととなりを見るとなぜか空気が明るくないことに気がつき、会話を必死に聞き取ってみる。唯一聞こえたのはゆゆのごめんなさい。という声だった。その言葉を聞いたときなんとなくもながいっていた意味がわかった気がした。勘違いかも知れない。けど、そう決めつけて逃げるのはもう嫌だ。もう後悔したくねーから。だから、立ち上がって去っていく男の前に立ちふさがった。ども。といって一度頭を下げる。男の方は俺が誰かわかってないからか戸惑った顔をされる。あいつの、幼馴染です。そういって目でゆゆを一瞬見ると全てを悟ったのか男は困ったように笑う。ふたりの間をかき回してすいません。けど、俺もどうしても諦められないやつなんです。いや、もともと俺がかき回したんだ。行ってあげてくれ。彼女のところに。きっと泣くのを我慢してるんだろう?こちらを一度も振り返らないように必死になって、ほんとに強い子だよ。強がりの上手な子、だよ。俺はもうその涙も拭えないから・・・・どうかあの子を頼むよ。幸せにしてやってくれ。俺の初恋の人を。そういうと男はそのまま去っていった。
「あの、よういちくん・・・」
「あ?」
「その、昔から好きって前に聞いたんだけど・・・いつから好きだったの?」
「お前が俺を好きになるよりかは前だな。少なくとも」
俺がはっきりそう言うとゆゆは驚いた顔をして目をぱちくりとさせる。だからあのことのことを少し話してみた。気が付けば隣にいるゆゆをいつの間にか勝手に自分のものと思っていた。それが恋愛感情だと気づいたときにはまだゆゆは恋愛の”れ”の字も知らないようなやつだった。でも自分が特別だと思われてることに自覚があったからまぁ、いいか。言うのは先になっても。と勝手に思っていた。中学になって荒れている俺とは別に優等生のゆゆ。普通なら関わり合いなどなくなるはずなのにゆゆが変わらずそばにいてくれたことがほんとに嬉しかった。だから何があっても守ろうとあの頃決意してた。それにあの頃からゆゆが俺に対しての恋愛感情をはっきり自覚したのを悟った。わかりやすく赤面されたりしていたからな。あれで分からないほどバカじゃない。でも本人はいたって真剣に隠してるつもりなので言い出しにくくなった。その時もまたまぁ、まだ先でもいいか。と勝手に思っていた。
そしたら急に高校は別々になることになって、ついてこい。なんて言えなくて。ましてやおいていこうとしてる女に気持ちを打ち明けるなんて出来る訳もなく、あの日がやってきた。ゆゆが初めて自分の気持ちを口にした日。俺とゆゆが別れて過ごすようになった日。電車の中ですごく後悔した。泣き虫なあいつが精一杯の勇気を出したのに自分が最後まで逃げ続けていたことがひどく恥ずかしかった。
大人になって、まぁ女とそういうことをしなかったわけじゃない。でもいつだって思い出すのはゆゆのことばかりで、下の話になるがやってる最中も勝手に相手をゆゆと置き換えてみたりしたわけだ。いつまでも長続きしない。恋人という関係になることもない。もなには彼女と言っていたが俺にとっては彼女なんかではなくそいつらはただの遊び相手だった。どうしても彼女とは思えなかった。ゆゆのことが忘れらんなくてずるずると初恋を引きずったまま死んでくんだろうな。なんて勝手に思ってた。
そしたら突然俺の前に現れた。初恋の相手で、幼馴染のお前が。奇跡だと思った。今度こそは、と思ったのにまた臆病になって、気持ちを隠して、なかなか言葉にできなかったらまた手遅れになって、やっとそこで動けるようになった。振られたくせに、まだ諦められなかった。
「だからこんなところまで来ちまったんだろな」
一通り話すと隣にいたゆゆがなんの反応を見せないのでゆゆ?と名前を呼ぶと真っ赤な顔を向けられる。いや、えっと。あのだって・・・。そんなに思ってもらってるとは思ってなくて・・・。そう言われて初めて自分の話したことがどれだけ恥ずかしいことか自覚する。ああ、しまった。言うんじゃなかった。つられてこっちまで顔に熱が集まる。それを誤魔化すかのようにゆゆの頭をくしゃくしゃと撫でてそんくらい好きなんだよ馬鹿。と乱暴に気持ちを告げた。そしたらゆゆも嬉しそうに笑うのでその顔を見てまぁいいか。と思ってしまう俺はやっぱ末期なんだろうな。でもいいさ。好きなんだから。もう開き直ってやるよ。んで、臆病な恋心とはおさらばしてやる。

臆病者の暴力的な告白

(君に変わらない愛を誓おう)

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