またせてごめん

24

会社が終わったあと、ふぅ。と息をつく。携帯を開き、探していた名前を見つけるとタップしてメールを送る。いつかもう一度回ってくる運命なんて待ちたくない。もう、待つのは嫌だ。だから、強くなりたい。たとえもう遅いとしても。
「君からのお誘いなんて本当に珍しいね」
「今日は、大事なお話があります」
会社のすぐ近くのカフェで座って早々に話題を切り出した。もう逃げない。そう決めたから。目の前に座るのは今私と恋人関係にある仕事の先輩だ。告白されて一度断っていたのだけれど、二度目の告白で痛いところをつかれた時に押し込まれてしまったのだ。お試しってことで。そう軽口で言われた関係はもう少しで一ヶ月になる。そのままぐだぐだと流されるのはもう嫌なのだ。
「先輩告白されたとき、あまりに図星だったから・・・・怖くなって流されてしまいました。大事な人を失わないために、先輩とお付き合いすることを了承してしまいました」
「“そんな重たい思い気味悪がられるよ。嫌われたくないんでしょ?だったら俺と付き合って好意をバレないようにしようよ”だったかな」
「ほんとに先輩の言うとおり重いと思います。今でも。けど、私・・・・もう逃げたくないんです」
だから、別れてください。そう頭を下げると先輩ははは。やっぱりか。と自傷気味に笑った。今日会った瞬間そんなこと言われる気がしてた。いや、最初からわかってた。ほんとは。一生君が俺を好きにならないことも。それでも、最低なことをしてでも無理にでも手に入れたいと思った。俺のほうが重たい思いだよな。ごめんな。そんなことないです。ほんとに嬉しかったんです。少なくとも一緒にいた時間、楽しかったのは事実です。でも、私どうしても忘れられないんです。諦めたく、ないんです。だから・・っ。ごめんなさい。私がそう言ってもう一度頭を下げると先輩は顔をあげてくれという。ゆっくりと顔を上げると先輩は笑ってゆっくりと口をひらいた
「最後に一言だけ言わせてくれ」
「はい」
「こんなこと俺が言うのもアレだが、幸せになってくれ。本当に好きだったよ。今までありがとな」
それだけ言うと先輩は席を立ち上がって去っていく。たぶん、ここで振り返ってはいけないのだ。先輩のためにも、今振り返ってはいけないのだ。人の好意をフルというのはそういうことなのだ。この痛みも、もらわなければいけないのだ
「何泣くの我慢してんだよ。泣き虫」
いるはずのない人の声が聞こえて顔を上げるとそこにはなぜか洋一くんがいた。驚いて目を見開くと手を指し伸ばされる。いつだって彼はこうやって私が下を向いてると目の前にやってきて、こうやって手を指し伸ばしてくれていた。そう、今みたいに。その手に気が付けば自分の手を重ねていた。強い力で引っ張られ、そのまま抱き寄せられる。耳元で好きだ。といわれ涙が次々に溢れた。
「私も好きですっ・・・・あの頃から変わらず、ずっと、ずっと洋一くんだけがっ、好きです」
「待たせてごめんな。でももう離したりしねーからさ・・・。だから俺の彼女になれよ。ほかの男のとこなんか行くな。ぜってー、後悔させねーから」
ゆゆ。もう一度その名前を呼ばれたらより一層涙がこぼれた。必死で頷けば洋一くんは切なげに微笑んでもう一度抱きしめてくれた

どうして君がここにいるんですか

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