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たとえ失恋したって世界が止まることなんてねぇ。そんな当たり前のことに泣きそうだった。辛いって思っても世界は回る。いつだったかそんな話を誰かとした覚えがあるな。なんて思いながらもだるい体を動かす。朝起きるとなぜかキッチンからいい匂いがしてきて驚くと御幸がリビングの椅子に座っていた。えらいのんびり起きるんだな洋一。時間大丈夫か?あれ?洋ちゃん起きた?早く顔洗っておいで。朝ごはんできてるわよ。・・・。まずどこから突っ込むべきか。いやとりあえず一番拒否したいことを拒否しよう。
「洋一なんて自分の子供みたいな呼び方してんじゃねぇよ御幸、気持ちわりぃ!」
「あれ?俺だけ??ママ、洋一が反抗期なんだけど。パパ泣きそう」
「えー、ママ洋ちゃんの味方だからごめんね」
「ママそれひどくない?」
目の前の朝から無駄に気持ち悪い寸劇に俺はもう何も言うまい。と顔を洗いに行った。戻ってもまだその寸劇は続きなぜ家にお前らがいるのかと言う突っ込みはできなかった。とりあえず御幸だけには技をかけておいた。もなの朝飯はやっぱりうまいけどゆゆの作ったカレーが無性に食いたかった。オムライスやハンバーグのほうが好きだけどあいつの甘口のカレー、きれいじゃなかったんだ。
それから3人揃って仕事に出る。なんで当たり前感出してこいつらまで人の家から出てきてんだろうか。そして最後の最後まで寸劇を続けるこいつらの頭を一発なぐった俺は悪くない。絶対に。じゃぁね。といって去っていくもなを見送り、同じ仕事場なので御幸と一緒に車で行く。お前家どうやって入ったんだよ。合鍵って言葉ご存知?警察って言葉知ってっか。管理人のおっちゃんにもなが話したら簡単に入れて鍵開けてくれたんだ。は?あいつ年上キラーだからさ。よくお前んとこ行くだろ?もう顔覚えられてんだよ。ちょっとサプライズとかどうこういったら。そんなんで開けるって・・・。ここそんな管理緩かったか?いや、そんなわけねーよ。あいつなんつう技持ってんだよ。俺のほうが驚いたっつうの。どんだけお前ら親しいんだよ。って。さすがにこえーよ。後でもなに問い詰めとくか。つか人を出しに使うんじゃねぇよ。あれ?バレた?バレバレだ。
いつものような会話をしていればすぐに練習場について更衣室に行って着替えを始める。ストレッチをしてからいつものようにランニングから練習が始まる。プロの練習は厳しい。きっと学生時代よりも。それでもやりがいを感じるからやめようなんて思ったことがねぇ。こんなに俺ひとつのことにまっすぐになれんだなって自分でも驚いたくらいに、野球は俺の大事なものになってた。そこに下心がないとは言わねぇけどな
「あいつなんか言ってたか」
休憩時間の時に御幸にそう聞くとなんも。と言われる。まぁだいたいコイツは予想ついてるんだろう。けどそれを言わないのは俺への優しさか、もなへの優しさか。考えるまでもなく後者だ。こいつの一番は野球だがそれ以外はもなでできてる。そう言っても過言じゃねぇ。そのくらい友人だったこの男がひとりの女にどハマりしている。これをもなのことを知らない誰かが知ればそれはそれは驚いて度肝を抜くだろう。最近あいつ倉持倉持言うからいい加減ちょっと後悔させてやろうかなって思ってたんだよな。そんな事を俺に言うのはきっと牽制だろう。別に取る気なんてかけらもねぇ。ただあいつを泣かせるなら話は別だ。恋愛感情じゃねぇが俺にとっては兄妹のような存在だ。何かあれば許すつもりはねぇ
「あ、そういやあいつから伝言預かってたんだわ」
「は?伝言」
「すんげぇ重要だからいい忘れんなって」
スゲェ重要な伝言ってなんだ??俺がそう疑問に思っているとエロ本全部床敷のところに隠しておいたから。だってよ。といわれ隣にいた男に思いっきりケリを食らわした。とりあえず帰ったらもなもしばく


ひみつのたからもの


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