20

遠征から帰ってきてすぐにもなから話があると呼び出された。俺の家に来たもなはいつものようににこやかに笑うことはなく向かい合うように椅子に座ると開口一番にゆゆに彼氏ができた。と告げる。俺は目を点にするしかなかった。
「ほんとは私からこんなこと言うの良くないと思う。本人から言うべきだと思うけどそれじゃ、倉持動揺してしまうでしょ」
「ちょっとまて。なんでいきなり。」
俺がそう言うともなは怒った顔をして私だって知らないわよ!と怒る。誰よいきなり横から手を出してきた男って!絶対上手く丸め込まれただけよ!じゃなきゃっ・・・・じゃなきゃゆゆちゃんあんな顔しないもの。別にわたしは倉持を慰めようなんて思ってない。だって、倉持がもっとちゃんと気持ちを言葉にしてたらこんなことにはならなかった。少なくとも倉持がいま後悔することはなかった・・・。泣きたいのは俺の方なのにもなが泣いちまったら泣けない。そんな悔しそうな顔されたら、何も言えねーよ。自分の弱さを認めざる得ない。
せっかく、せっかく倉持が幸せになると思ってたのにっ。なんでっ。馬鹿じゃないの!なんで言わないのよ!ほんとにバカじゃないの!バカバカバカ。と言いながらクッションで殴られる。ちょ、お前絶対酔ってんだろ。酒飲んできただろ。ちょっとしか飲んでないわバカ野郎!ちょっとの量じゃねーよ!そんだけよってんだから!とりあえずなんとか押さえつけて部屋を移動して寝室に寝かせる。どうせまた何言えばいいのかとか悩んで酒の力借りたんだろうな。むしろよくここまでこれたよコイツ。御幸にはこのこと黙っといてやるから二度とするなと後で言わなければいけない。
いつものように返ってきているゆゆのメールを見て大きくため息をついた。なぁ、お前はもう違うやつがやっぱり好きなのか?あの頃みたいに戻れねーのか?ほんと、もっと早くに気持ちいっとけばこんな後悔することなかったのにな。もなの言うとおりだ。わかってる。自分が一番そんなこと。けど、怖かったんだ。ただ
こんなヘタレな俺がゆゆの幸せになる邪魔をするつもりはない。けど、ゆゆを泣かすような奴なら容赦はしない。ゆゆがどんだけ嫌がっても、引き離す。たとえ嫌われたとしても。それが、幼馴染としてできる最後のことだとしても。まだ寝るにはちょっと早い時間。家の鍵と財布。携帯にバイクの鍵を握って家から出て鍵をかけた。遅いってことは十分わかってる。これが最後だ。だから・・・・
「最後くらい、かっこいい幼馴染だったって思わせてやるよ」
今までずっとカッコわりぃとこばっか見せてきた。だから最後くらい、かっこよくありたい。あいつの中でヒーローのような存在でいたい。ふと何かあった時に頼れるような、そんな存在でいたい。消してこの想いが届くことがなくたって。もう構いやしねぇ。俺はタダあいつが笑ってたらなんだっていいんだ。最後あんなふうに泣かせた俺があいつとの未来を見るなんておこがましい。あいつのとなりに並んでることを夢見るなんてですぎている。けど、けどな。お前の幼馴染としてお前が笑ってることを願うくらい。いいだろ?
きっと一生忘れらんねーけど、お前の前ではもうそんな素振り一切見せたりしねーよ。お前の幸せをいつか心から祝福できるようになるから。それまでは精一杯強がってみせるから。だから最後に言わせてくれ。たった一言


その言葉は遅すぎた


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