07

ゆゆ。そう呼べばいつだってあいつは俺に笑みを見せた。無邪気で子供みたいな笑顔。そんな顔が好きだった。けど、嫌いだった。俺以外にそんな顔を見せることが。俺だけを見ろよ。なんて言える訳もなく。そんな気持ちを胸に抱きながら過ごした中学。今じゃ懐かしい思い出だ。
ごめん。今日行けなくなった。そうメールが来たのは少し前。当日ドタキャンなんてあいつにしては珍しい。了解。とだけ返事を返し、これからどうすっかな。と思っていると隣の柱にもたれかかって携帯を見つめている女が目に入った。ゆゆ?と思わずその名を呼ぶと。ゆゆは驚いた顔をして俺を見る。どうして洋一くんがここに?いや、それ俺のセリフ。わたしは先生と約束してたんだけど先生お仕事終わらなかったみたいで・・・。たしかに今日忙しそうにしてたもんね。うんうん。なんてゆゆは疑わず完全に信じきった。いや、おれもさっきまで信じるところだった。だけどこれは完全にあいつの仕組んだことなのだ。なるほど。こうやって偶然を装わせてあわせようとしてくれてたのかよ。ややこしいことすんなよ。と言いたいところだが正直めちゃくちゃ嬉しい。あれ以来なかなか会う機会はなかった。電話をたまにするだけ。すでに半月ぶりになる。何も行動に移せない俺にあいつがチャンスをくれたんだ。無駄にできるか。
「行くぞ」
「へ?」
「飯。おれもダチにドタキャンされたから予定空いたんだよ。付き合え」
ぶっきらぼうな言い方になってしまった。これは良くなかったな。言い直そうとするとゆゆはくすくすと笑っている。それがどこか嬉しそうに見えた。行く。そういって俺の隣に並ぶ。それがおれもひどく嬉しかった。小学生レベルかよ、俺。
そこからはたわいない話。長いあいだあってなくても少しずつ感覚を取り戻していくとゆゆはよく喋る。俺もくだらないことを喋る。そんでお互いが笑う。この空気が好きだったんだよな。俺。大きな安心感を抱きながら飯を食う。あれ、この店ってこんなうまかったっけな。
飯を食い終わると二人並んで家に帰る。楽しい時間はあっという間、すぐにゆゆの家の前につく。あっという間に別れの時間になった。じゃぁな。うん。家入るまで見とくから、いけ。い、いいよ。だいじょうぶだよ。いいから。心配なんだよ。俺がそう言うとゆゆはふにゃりと照れたように笑ってありがとう。と礼を言う。ああ、クソ。可愛い。ゆゆが部屋に入るまで見上げているといきなりゆゆは自分の家の前で洋一くん!と叫ぶ。なんだ?と思っていると上を指さした。
「今日すごいきれいな星空だよ。ぴかぴかしてて洋一くんみたいだね!」
それじゃ、おやすみなさい。それだけいってゆゆは部屋の中に入ってしまう。
「な、んだよ・・・あいつ・・・」
俺はしばらくその場を動けなくなった


キラキラなかなしばり

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