助けて
06

瑠鳴さんとの交渉に失敗した。どうやら倉持は瑠鳴を野球部に勧誘しようとしたらしい。けど断られた。本気で落ち込んでいる倉持をみて俺はけらけらと笑う。そりゃ甲子園は売約済だからな。うるせぇよ。毎回振られてる奴なんかに言われたくねぇ!と言われれば返す言葉もない。たしかに俺は毎回振られてるけどそれでも諦めねぇよ。俺がそういえば倉持もむすっとした顔のままわかってるっつの。といってまた立ち上がる。あーあ。瑠鳴さんしばらくむすっとした顔になるだろうな。俺みたいなしつこいのが一人増えるんだから。その顔を想像すると思わず笑ってしまう。そういや、結局昨日も哲さんに瑠鳴取られちまったな。あーあ、俺ってなんか間取り持ってるみてぇじゃん。おかしいな。教室に入ってきた瞬間から瑠鳴の顔は不機嫌そのものだった。俺の顔を見るなりすぐに目の前まで来て思いっきり頭を殴ってからいい加減にして!と怒鳴られた。は?え?なに?理解ができない俺にあいつら!といって廊下を指差す。そこには野球部の降谷と沢村がいた。ん?倉持どこいった??倉持は?と聞くと玄関でしゃがみこんでる。と真顔で言い切った。たぶん昨日の俺と同じ目にあったんだろうな・・・。昨日の痛みを思い出して身震いをする。それで、なんであいつらが?と聞くと二人共あんたにわたしはふたりの足りないものを全部持ってるとか言われたからって追い掛け回してくるのよ!ああ、そういうことか。たしかに昨日あいつらにはそんなこと言ったっけな。良かったな。弟子ができて。というともう一度思いっきりチョップされる。結構いたい。亮介直伝のチョップよ。ふん。と鼻を鳴らして席に着く。廊下からの熱い視線をガン無視して本を取り出しそれを読み出した。はぁ。仕方ねぇな。席を立ち上がって俺は降谷と沢村に教室にかえるように言う。まだ学んでないと反論するがいまあいつの機嫌損ねたら出来るもんもできなくなる。と言えばしぶしぶだけど引き下がった。かえらしたぞ。と声をかけても瑠鳴は目ひとつ合わせず無視をする。そんだけ機嫌が悪いんだろう。俺も隣の席に座ってスコアブックを開いてその結果を見ていく。隣に感じる気配はやはりどこか俺に安心感を与えた。
しばらくすると倉持が戻ってきて俺に思いっきりタイキックをする。それ八つ当たりだろ。そう俺が言う前にまた倉持は瑠鳴にからみに行く。瑠鳴は困った顔をして倉持の頭をわしゃわしゃとなでだ。完全に子供扱いじゃねぇか。まぁ、俺もこの間されたけど。倉持と同じ扱いっていうのはちょっと気に食わねぇな。俺が不満げな顔をすると瑠鳴はそれに気付いて困った顔をしてちょんと俺にデコピンをする。あっけにとられていると間抜けな顔といって無邪気な笑みを見せられる。その顔を見た瞬間一気に顔に熱が集まり咄嗟にそれを隠すために机に顔を伏せた。となりでどうしたの?と不思議そうにする瑠鳴の声が聞こえる。ああ、なんで無自覚なんだよこの人。ほんと、これで諦めろって無茶だろ。声を聞くたびに、話すたびに、見るだけで、溺れていくってのに。その顔なんて見たら一気に深くまで沈むんだよ。なんだろうね?御幸だから気にしなくていいんじゃね?どうせロクなことじゃねぇし。そうだね。あ、倉持これ去年のテストの問題ね。こっち答案。サンキュ。でも瑠鳴さんは大丈夫なのかよ。その微妙な敬語いらないわよめんどくさい。敬語使えないなら普通にしてなさい。いや使えんだけどなんか微妙じゃん。ダチ同士で敬語は変だろ?はいはい。そういうことにしてきますよ。それと、テストの問題用紙も解答用紙もコピーだから大丈夫よ。だから赤点なんか取らないでよ。ありがとな!助かる。はいはい。なんて会話が聞こえてそっとその様子を腕の隙間から覗き込む。自然に笑っている。あの人が。なんだかそれだけでいい気になれた俺は相当単純なのかもしれない。

笑って僕の好きな人

[ 8/25 ]

TOP


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -