03

それでも俺は諦められなかった。なぜかと聞かれればわかんねぇけど、ただひたすらに彼女に惹かれた。どこまでも真っ直ぐで、馬鹿な人。俺はそれからも何度も彼女に告白をした。その度に彼女は切なげな顔をして断った。もちろん痛いとはおもう。けど、その次の日、すこしだけやさしくなる瑠鳴。それがたまらなく愛おしかった。ダメだよ。ほんと。そういう時は強く引き離さなきゃ。なのにそれを瑠鳴はできない。だって、それは自分がされてきっと一番嫌だったことだったからだ。哲さんがどんなふうに言おうとも、結局は振った事と同じ。それで傷つかないわけがないんだ。それでも好きでい続けるんだから、俺と彼女はやっぱりどこか似ているのかもしれない。まぁ、瑠鳴はここまでひねくれた性格はしてねぇけど。あの人は自分で抱え込むタイプだから、余計俺はそれが心配だった。全部話して欲しい。俺を頼ってほしい。哲さんじゃなく、俺を見てよ。どんどん湧いてくる欲は収まることを知らない。変わった瑠鳴に近づく人間は少なかった。3年生は学年も変わり、なかなか接点を持つことができず、2年は変わってしまった彼女を恐れ、関わろうとしない。あんだけお世話になっておきながら、なんとも薄情な話だ。でもそのおかげで話しかけるのはごくわずかの人間だけ。今じゃ俺が一番近くにいる。それが何よりも嬉しいなんて最低な事を考える。最近になって、倉持もちょこちょこと瑠鳴に話しかけるようになった。けどあんまり相手にされない。そりゃそうだ。俺だって最初は口ひとつ聞いてもらえなかったんだから。だけど日に日に瑠鳴が悲しそうな顔をして倉持を見るのを見てなんとなく見てられなくなって、思わず俺は手を貸した。ふたりの会話の中に俺も混ざることで、瑠鳴が話さなくても普通にいられる空間を作り出したんだ。それからすこしだけ瑠鳴は俺たちには話すようになった。自分から話しかけるのはなにか理由があるときだけだけど、俺たちが話を振れば返事は帰ってくるようになった。だけど野球部の話をするのは嫌がった。それでも俺らは話し続けた。だって、ホントは気になってしょうがないって知ってるから。あんなに大好きだった仲間のことを、そうそう切り捨てられるわけがねぇ。この人なら特にそうだ。
「瑠鳴。少しいいか」
突然3年の哲さんが2年の俺たちのクラスに来て彼女を呼び出した。瑠鳴は驚いた顔をして哲さんを見る。瑠鳴が返事を返さずにいると哲さんはだまって俺たちの前まで来る。放課後、話がある。お前が待てないというなら、部活の後家に行く。なんと返事を返すのか俺と倉持はそれだけが気になった。こいつが行くなんて素直に言うとは思えない。だからといって、家に来られるのはもっと嫌なはずだ。
「わかった。だから、家には二度と来ないで」
「ならウチに来い。ちゃんと飯は食ってるのか。最近また痩せただろ」
「それセクハラよ。」
そう言われると哲さんも何も言えなくなり困った顔をして一度だけ瑠鳴さんの頭を優しく撫でてそのまま教室を出ていく。瑠鳴?恐る恐る顔を覗き込むと瑠鳴は泣きそうな切ない顔をしていた。その顔を見てわかった。ああ、どんだけ俺がコイツのとなりを独占していると思っていようとも、結局こいつのなかで一番強い存在なのは哲さんなんだ。そうわかったとき、この恋が実らないことなんてわかっていた。けど、それでも諦められないほど、俺は溺れていたのかもしれない。


恋に溺れ、あなたに溺れ

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