輝く
02

純さんや哲さんに話を聞きに行った。二人も彼女の豹変ぶりには驚いているらしい。彼女は長い休学で止む終えず留年した。本当は高校すらやめそうな勢いだったのを両親が止めたらしい。なんとか学校には来るものの、あれだけ優秀な成績を残したテニス部もやめ、人との付き合いもなくなった。野球部にも顔を出さなくなり、本当にあの頃の彼女が幻想だったんじゃとは思わすにはいられないほど。先輩たちの動揺も激しかったが、同じ学年になったことは2年生の中では結構難しい問題だった。先輩だった人がそうじゃなくなった。なんと呼べばいいのだろうか。関わっていいのだろうか。下手な刺激を与えたくない。みんなそんな感じでよそよそしく彼女には触れないようにしていた。それが俺は嫌で勝手に話しかけに行った。瑠鳴!同じクラスになれたな!笑いながらそう言うと彼女は俺を見ることもなく窓をずっと見つめる。シカトかよ。つれないなぁ。俺と瑠鳴の仲じゃん。なんて俺が言うと今度は睨まれた。呼び捨てにしないで。あと、話しかけないで。あんたといると女子に変な誤解されて迷惑なのよ。人のもの盗んで隠したりないことあること言いふらす奴らだっているんだから。それだけ言うとまた窓のほうを向いてしまう。その時俺は何も言えなかった。きっと彼女の言っていることは事実だと思ったからだ。俺のせいで何かしら迷惑をかけているのはあると思う。女子マネでもないのに野球部と異常に仲がいいのも僻まれてたかも知んねぇ。そう思うと何も言い返せなかった
ただそばを離れるのも嫌で、となりに椅子に座って顔を伏せた。授業になっても俺がそこを動かないでいるとそこの席だった男子が席を交代してくれた。それについてはホントに感謝した。まぁ、向こうからすればこの居づらい場所を変わって欲しかったんだろうけどな。それから俺はとにかく瑠鳴のそばにいた。何度も話しかけた。ここで折れたらほんとになんにもなんねぇと思ったから。それと色々と瑠鳴の事故についても聞き回った。はっきりどうなってそうなったのかわかんねぇから。少しずつ集めていった情報からわかったのは瑠鳴は脚を故障して入院していたということ。なにかの下敷きになりそうだった相手チームの子を助けた代わりに瑠鳴が下敷きになって、大怪我を負った。それは俺たちの夏の予選が始まってすぐのことだった。だけどそれだけで瑠鳴があそこまで変わる意味がわからねぇ。留年したのだってたしかにこたえると思う。テニスをできなくなったのだって堪えるだろう。けど、それで彼女がああまでなるだろうか。あの笑顔振りまいていた彼女がこうなると言うんだろうか。そう自分に問いかければ納得がいかなかった
ただ俺はとにかく瑠鳴に話しかけた。野球部のことを話すとすごく機嫌の悪そうな顔をする。でも3年の先輩の話をすると少しだけその表情が和らぐのを彼女自身気づいているだろうか。やっぱり、まだ好きなんだろうか
放課後、いっしょに日直の仕事を片付ける。最後に日誌を書いて終わるだけ。倉持にもさきに部活に行ってもらった。新学期始まってそうそうこんなこと言うなんで浮ついてると思われるかもしれない。けど、今言わずいつ言えばいいんだよ。
「なぁ、瑠鳴先輩」
「なに。さっさと日誌やって帰るよ」
「俺さ、出会ってからずっと瑠鳴先輩のことが女として好きなんだけど。本気で」
俺がそう言ってまっすぐ見つめると瑠鳴は驚いた顔をして固まる。そして顔をクシャっと歪めて寂しげに微笑んで「ごめん」とだけ言われた
俺はこの日、本気の告白をして、振られました。


さよなら恋よ

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