ありがとう
卒業式の日、俺たちは卒業してく先輩たちを見送った。一人一人呼ばれていく名前。先輩たちの名前が聞こえるたびに涙腺が緩みそうになる。倉持なんてすんげぇ顔になってる。このぶんだと沢村なんてやばいんだろうな。金丸大変だろうな。なんてのんきな事を考える。ああ、俺もこの日を最後にあの人を卒業しなきゃなんねぇんだ。そう思うと涙腺がもっと緩みそうで怖かった
式が終わって先輩たちが部室に顔を出しに来る。号泣してる後輩に笑いながら泣くな。とか言ってる純さんのほうが泣きそうな顔だ。亮さんもいつもより優しい顔になる。沢村がクリス先輩卒業しないでください!なんて騒いでるのを聞いて周りの奴は爆笑する。ほんと、最後まで騒がしいやつ。ある程度挨拶が済むと俺たちは哲さんの背中を押してグラウンドまで連れてくる。その中央には一人の女がたってる。そう、瑠鳴だ。哲さんも驚いた顔をして瑠鳴を見つめる。
「私、ここでてっちゃんに初めて振られた。好きだって言う前に野球に専念したいなんて言われて何も言えなかった。」
そういって瑠鳴は遠くを見つめる。まるでその時を思い出しているかのように。その横顔はいつもより大人っぽくて、なんだか瑠鳴じゃないみたいだった
「ずっとここにたってるてっちゃんを見てきたよ。甲子園に連れてってくれるって約束をほんとに信じてた。みんなで行きたかった」
それは俺たち全員が後悔してもしきれない過去。取り戻せない夏の出来事
「悔しかったし、私はずっとあのまま進めないって思ってた。けどさ、後輩たちが背中を押してくるんだよ。足止めるなって背中を蹴ってくるんだ」
何度も喧嘩した。揉めるたびに瑠鳴は困った顔をするけどどこか嬉しそうだった。喧嘩するっていうのは自分の主張があるから。自己意識が高い証拠だよ。って言われたっけ
「私のこと好きになってくれた人が、最後まで応援してくれたんだ。だから、その気持ちに応えたい。例えダメでも、ちゃんとその気持ちに形で返したい」
だから。そういって瑠鳴は大きくその場で息を吸う
「今度は私が甲子園に連れてってあげるから、私と付き合ってよ!好きだよ。好きなんだよてっちゃんのことがずっと昔から変わらず・・・・!」
その言葉を聞いた瞬間哲さんは走って瑠鳴の下に行って抱きしめる。驚いた顔をしていた瑠鳴も哲さんがなにかいったのか泣き出して哲さんの背中に手を回して号泣する。その雰囲気でわかった。きっとうまくいったんだ。やっとか。なんて先輩たちは言うけどその表情はどこか安心と嬉しさが含まれている。ほんと、やっとだよ。やっとこの恋に終わりが来た。入り込めるわけねーよな。あんな想い合ってるふたりの間に。はなっから勝ち目がないってのはわかってたけど。それでもほんとに好きだったんだ。
「好きでしたよ。瑠鳴さん」
俺は誰にも聞こえないくらい小さな声で最後の告白をした。


さよなら。俺の本気で好きだった人
(どうか幸せになってください)

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