一途な初恋
試合が終わり、グラウンドの整備をする。瑠鳴は先輩たちに囲まれながら少し居心地悪そうに同じようにグラウンドを整備していた。整備も終わって荷物をまとめて帰ろうとしている瑠鳴の前に俺たちは全員で立つ。この間は無様な試合をしてすいませんでした!俺がそう言ってほかのやつらがすいませんでした。といって全員で頭を下げる。瑠鳴。哲さんがぽんと彼女の背中を押す。彼女は悔しそうに歯を食いしばる。言いたいことは言わないとわかんないよ。亮さんも背中をぽんと叩く。文句好きなだけいってこい!純さんはわしゃっと頭を軽くなでる。そうやっていろいろな先輩たちに背中を押されて瑠鳴は俺たちの前に立つ。なんで・・・。へ?言葉が聞き取れなくてそう聞き返すとなんで!!と大きな声で叫ぶ
「なんで練習で手を抜くの?!なんで一つ一つに真剣になれないの?!なんで、なんでそんな適当にするの?!野球が好きで、野球をやりたいからここにいるんじゃないの?なのになんで、なんでそうやって・・・」
私は!瑠鳴の悲痛な声が響き渡る。どんだけ頑張っても試合には出れない。ここにいる誰よりもバッティングだって頑張った。投手たちよりも、いっぱい勉強した!でもどんだけ努力しても私は試合には出れない。なんで、なんでよ・・・。あんたたち私が喉から手が出るほど欲しいもの持ってるくせに、なんでそんなことするの?そんなんなら私と性別変えてよ!私は女だから結局最後は一緒に戦えないんだよ!!どんだけ努力したってそれが役に立つのは準備期間だけ。戦ってる時同じ戦場に立つことができないんだよ!だから腹が立つの。神様に恵まれて男に生まれれたくせに、なんで、なんでっ・・・!だって、だって、約束したのにっ。約束、したじゃないっ。連れてってくれるって、なのに、なのに。喉をひくつかせ涙を流す瑠鳴を哲さんが抱きしめる。それはあいつらじゃなくて俺たちへの文句だろ。うん。ちょうどだし、言いたいこと今いいなよ。うが。先輩たちの言葉を聞くと瑠鳴は肩を震わせる。そしてゆっくりと言葉を音にする。行きたかった。行きたかったの。あの舞台に立つみんなが見たかった。あの舞台の観客席から応援したかった。だって、連れて行くって言ったのに。だって、なんで。まだ、まだ私無理だよ。まだ終われないよ。終わってほしくないよ。まだ、みんなと一緒にいたかった。もっともっと一緒にいたいのに、おいてかないでよ!それから声を上げて涙を流す瑠鳴さんを先輩たちみんなで囲って頭をわしゃわ者と撫で回す。ごめんな。先輩たちが謝るたびに彼女は首を横のふる。たぶんそうじゃないんだ。瑠鳴は、ただ認めたくないんだ。先輩たちの夏が終わったことを。まだあの舞台に立ってないから
彼女のなく姿を見て俺たちはみんな拳を握る。先に進まなきゃいけない。そんなことはきっと彼女自身百も承知なんだろう。だから今まで弱音の一つも履かなかった。けど、あまりに情けない俺等を見て言わずに貯めていたものが耐え切れなくなったんだ。俺が、俺にもっと力があれば。彼女がこんなことで泣かずに済んだのに。もっと早くに彼女の変化に気づいていれば、今瑠鳴は・・・・。あの人の腕の中にはいなかった。醜い嫉妬。そうわかっていても止められない。悔しくて拳を握り締めた。ほんと、かなわない・・・


ため息をつかせたのは誰かわかっているだろうか

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