もし、
倉持の言葉が理解できなかった。だけどよくよく考えればなんとなく理解ができる。言われてみればおかしな話じゃなかった。あの人の態度が変わったのだってそれが理由の一つかも知んねぇ。だったら尚の事俺たちが目指す場所は決まってる。監督にも瑠鳴にもやめさせれないように。やるしかないだろ。哲さんにも言われた。苦しい時ほど顔に出すなって。チームが揺らぐから。俺はきっと誰もが認めてくれるようないいキャプテンには到底なれない。けど、けどそれでも俺だって譲れないものがある。あの人を、あの場所に連れて行くってずっと前から決めてたんだ。今更、諦めるわけにはいかねぇんだよ。甲子園行きをこの秋大をとって必ず手に入れる。甲子園行きを決めた俺たちを置いて監督も瑠鳴もやめられねぇだろ?俺がそう言うと全員が息を飲む。必ずここにいる奴らなら全員俺の意見に乗るさ。だれもあの人たちにここから去って欲しくないんだからな
降谷の球もノリの球も瑠鳴は顔色一つ変えずにうちに来る。そしてうまいところに転がしていた。ほんと、こんなうまいのが女って複雑だよな。最後に沢村がマウンドに上がる。その球をうちに来たのはクリス先輩だった。沢村にとっては恩師。自分を変えてくれた人だ。だからこそ、期待に答えろよ。俺はアウトローを中心としたピッティングのサインを沢村に出す。そして沢村はみごとクリス先輩を防いだ。最後のボールは今までで一番いいボールだった。そのあともうまくバッターを打ち取り、無失点で抑えた。9回が終わり、先輩たちも整列しようとすると監督がまだだ。まだ終わってない。そういって延長の許可が下りる。試合に出ていなかった3年までも気遣い。こんな監督、そうそういない。俺はやっぱりこの人からもっと学びたい。瑠鳴!監督が彼女を呼ぶと彼女ははいっ。と慌てて返事をする。どんだけ怖いんだよ監督のこと。お前もピッチャーとして出ろ。監督の言葉にそこにいた全員が驚いた顔をする。やらんのか。監督がそう聞くと瑠鳴は首をゆっくりと横のふりやります。と大きな声で返す。その声は少し震えていた。純さんが2回投げて、その後瑠鳴がピッチャーとしてマウンドに立つ。球威はないものの正確なコントロール、そしてバッターに狙いを定めさせない変化球の種類。ほんと器用なやつだよ。短時間でこんだけ球種増やすんだから。沢村と降谷の見本になるようなピッティング。みごと最初のバッターを三振に収める。そして次に俺の番が回ってくる。俺が打席に立つと少しだけ瑠鳴の表情が硬くなる。捕手として座っているクリス先輩に守備を瑠鳴に教えたのって誰なんですか?と聞くと結城だ。と答えられる。やっぱりか。そりゃそうだよな。だが教えを頼んだのは瑠鳴からだ。お前たちにぎゃふんと言わせるんだと言っていた。くすっと笑ったのはきっとその時のことを思い出しているからだろう。俺もいい加減お前の期待に答えないとな。ずっと期待させるようなこと言うだけ言って何もできなかった。だからお前の球打つことで、証明する。今度こそ、絶対だって。一投目。胸元にスライダーが入る。振り遅れてボールにかすることもできなかった。ほんと、球威なくてもいい球なんだよな。でも俺はずっと瑠鳴の事見てきたから、わかるんだよね。次の球がどこの来るのか。瑠鳴が投げるのを見て俺は思いっきりバッドをフル。カキーンと金属の高い音が響きボールは飛んでいく。そのたまは亮さんに取られ、すぐにファーストにボールが投げられる。必死に走ってなんとかギリギリセーフ。ちらりと瑠鳴を見るとむすっとした顔をして俺を見ていた。な。俺はずっと見てたんだからわかるんだよ


ヒーローになりたかった

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