彼女は部活を休むことが少しだけ増えた。どこで何をしているのかはわからない。学校に来ても部活に来ない日だってある。それでも練習試合とかの日は欠かさずきた。何かわからないがノートに必死に何かをメモしていた。そのノートは誰のために使われるのか、それが聞きたいけど聞けない。もし、もしあの人のためだと彼女に言われれば俺は・・・。
成翔との試合、俺たちはボロボロだった。勝ちは勝ちでもギリギリだ。降谷もレギュラーのメンバーも全員、ひどい結果だった。試合後、整列している時に監督から厳しい言葉が突きつけられる。夏の悔しさを忘れたのか。そんなことはない。そう言い返したくてもそうできない。なぜなら今回の結果はあの時と同じだからだ。焦って、初級の難しい球から手を出して。学習したはずなのにまだ俺は出来てない。それが悔しかった。お前も何か言いたいことがあればいえ。監督の後ろに立たされていた瑠鳴は監督にそう言われると一度俺たちを見たが直ぐにふいっと顔を逸らしありません。とこたえる。監督が本当にいいのか。というとはい。彼らに何かを言う必要性がないです。とはっきりという。それは俺たちを見限った。そういう意味の言葉だった。これ以上は時間の無駄なので失礼いたします。そういうと瑠鳴はそのままグラウンドに背を向けて去っていく。俺はその背中に何も言えなかった。そしてその日から瑠鳴は一度もグラウンドに足を向けることはなくなった。学校に来ようとも、野球部の連中全員を無視して、視野に入れても存在を認めようとすらしなかった。彼女はきっと失望したんだろう。あまりに不甲斐ない俺たちに。それから少しして、先輩たちが突然グラウンドに現れた。いきなり先輩たちの指導が始まりなにがなんにやらわからない。そして大会の抽選先日、突然先輩たちとの練習試合が行われることになる。そしてその相手チームの方に、瑠鳴はいた。冷たい目で俺たちを見ていた。そして一番驚いたのは初回から守備に瑠鳴が入ったことだった。たしかに公式戦じゃなかったら女子だってやっていい。それに今は身内同士のやりあいだ。けど、けどお前打つしかできないだろ。打率が良くても守備ができなかったら邪魔になるだけだろ。そう甘く見ていたらすぐ痛い目にあう。瑠鳴は自分の方に飛んできたボールをしっかりとキャッチして周りの支持を聴きながら的確にボールを投げ、アウトを取っていた。その姿を見て3年の先輩たちはナイスといって背中を軽くたたく。それには瑠鳴も少しばかり照れくさそうに笑っていた。つかお前ここ数日でそこまで飲み込めるもんかよ。私器用だからね。こんなところまで野生の勘発揮しなくていいんじゃない?基本運動系はいけるんだからバカにしないでよね。その会話を聞いてここ数日彼女が何をしていたのかわかった。先輩たちとこの日のために練習をしていたんだ。試合が進んでいく中、倉持が御幸は聞いていたのかよ!と何か怒ったように突っかかってくる。なにを?と聞き返すと監督のことを言われた。大方予想はあった。OBでもないコーチが来た理由の可能性として。だったら、瑠鳴のことも知ってたのかよ。瑠鳴?なんのことだと聞くと倉持は拳を強く握り締める。あいつ、ホントは今年の年明けには決まってたんだよ・・・・。は?何がだよ?わけがわからない。しばらく黙っていた倉持がゆっくりと口を開く。
「あいつ、青道をやめるって。違う学校に行くんだと」
「は?なにいってんだよ。そんなはず・・・」
「親の都合で引っ越すことになってこの学校にいるのは今年が最後だったんだよ」
最後・・・?俺はその言葉をすっと受け入れることができなかった


可愛くないから旅をする

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