一生
試合を勝ち進めていくたびに彼女は笑う。当たり前だ。嬉しくないわけがない。その笑顔が見たいと思っていたはずなのに俺は今、逆のことを想いそうだ。俺以外に向けられるそれを受け入れたくなかった。勝手だよな。笑顔になれるならなんだっていいって思ってたはずなのにいざそうなればこのざまだ。ふぅ。と息を吐いて自分の部屋に戻ろうとするとぐいっと肩を引っ張られて額に手を当てられる。え?と驚いていると目の前には瑠鳴の顔がある。熱はないか。そうつぶやかれて彼女が何をしたかったのか理解した。どうしたの瑠鳴ちゃん?向こうから触れられた嬉しさでニヤニヤとすると彼女はほんとに困った顔をしてあんたがあんまりにも変だったから気になった。なんていう。変?なんのことかわからなくて俺が今度は困った顔になる。でも彼女もうまく説明できないのか手で必死に何かを表現しようとする。そしてそれが無理だったのをごまかすために俺の背中をバシバシと叩いた。いてて。けっこう瑠鳴力強いんだから加減してよ。じゃぁここは御幸流で謝ってあげよう。ごめりんこ。自分で言うのはいいが人に言われるとこうも腹立たしいのか。瑠鳴のおかげで身をもって体験できた。御幸これから用事ある?と聞かれ得には。と返すとじゃぁちょっと部屋行って待っといて。と言われた。へ?と驚いている間に彼女は別のところから人に呼ばれてそのまま去っていく。は?どういうこと?いきなり、なんだよこれ・・・。って、なに期待してんだ俺。絶対そういうことじゃないからな。でもなんのようだって言うんだよ・・・。あー、もう。俺あの人好きになってからほんとダメダメじゃん。てことは高1からダメダメになってんのかよ。ださ。でもこんな俺でもいいっていてくれる人がいたらさ、瑠鳴のこと、諦めれるのにな・・・。周りの知ってる俺はいつも完璧だ。まぁ一部のことではそうじゃねぇけど。でも強い生き物だって思われてると思う。でもさ、たまには俺だって弱音吐き出したくなんだよ。そんな俺でも誰か受け止めてくれねーかな・・・。この恋を諦めれるようにしてくんねぇかな
結局瑠鳴に言われたとおり部室で瑠鳴のことを待っている。俺って案外素直なんだぜ?って仲間の誰かにいって誰が信じるだろうか。いや、誰も信じないだろうな。こんこん、とノックがなって俺がはーい。と返事を返すと扉がある。入ってきたのはもちろん瑠鳴だった。ここにいる野郎どもがドアノックなんかするわけねぇしな。瑠鳴は入ってくるなり俺にベッドに寝そべって。なんて言い出す。は?いやいや、何言ってるんですか瑠鳴さん?焦っていると問答用無用と言わんばかりの馬鹿力でベッドに放り投げられた。そして自分も同じようにベッドに乗ってくる。その顔は少し怖い。さっきまでとは違う意味でドキドキしてきた。俺の背中の上に跨られてなんだなんだと俺が不安に思っているとぐっと背中を押される。そこは少し痛いけどきもちい。消してマゾなんかではない。普通にツボを押されているんだと思う。そのまま黙って瑠鳴はゆっくりと俺の背中のツボを押していく。たまにんっ。とか声が漏れると少しばかり恥ずかしい。それを何よりも恥ずかしくされるのは俺がこんな声を出してもからかうことも何か言うこともなくただ黙ってツボを押し続けられているからだ。しばらくしてゆっくりと瑠鳴さんは俺の上から降りてどうよ?と聞いてくる。どうって、気持ちよかった。と素直に言葉を口にするといひひ。と瑠鳴さんは照れくさそうに笑った。てか、ほんとに気持ちよかった。独学?と聞くとまさか。と返される。マッサージってね、素人がやると余計に悪くなるんだよ。独学なんかでやっていいものじゃないんだよね、案外。知り合いにエステシャンがいてね、その人に教わってみた。ちゃんといろんな人に実践したし、その人にもこれなら大丈夫って太鼓判押してもらえたから安心して。にこっと笑う瑠鳴を思わず抱きしめる。み、御幸?少し驚く彼女をもっと強く抱きしめる。俺たちのために、なんでそこまですんだよ。馬鹿。俺がそう言うと瑠鳴はふふ。と笑って楽しいからだよ。という。そりゃね、怖いよ。負けてしまうんじゃないかって毎回怖い。けどさ、御幸が連れ出してくれたあの日から少しずつ、なんとなくだけど前に進めてきてるの。それが嬉しいし、みんなと何かやるっていうのもだけど、ここの仲間と努力するっていうのが楽しくて仕方ないんだよ。そういってぽんぽんと俺の背中を慰めるかのように彼女を叩いた


やさしいおと

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