まっすぐ
10

合宿五日目、すでに体力差が出始めていた。瑠鳴はいつものようにバッティングをしている。いや、いつも以上に一球一球が重い気がする。まぁ、合宿も今日が終われば残りは練習試合だしな。自分が力をかせるのは今日までとか思ってんだろうな。そんな姿を横目に俺は沢村たちとブルペンに入った。午後からは瑠鳴と監督が入れ替わり小湊が外れてほかのレギュラーは監督が相手をし始める。息を乱して少し離れたとこで膝をつく瑠鳴に俺はボトルを渡した。口移しで飲ませようか?なんて冗談を言っても何も返事は帰ってこず無言でボトルを奪われる。そんだけ疲れてんだろうな。ほんとに。頑張りすぎ。と俺が言うと全然だよ。と拗ねたような顔をされて言われた。どこが?と聞けば私はまだあんなに速い球を投げれないし、あんなに走り続けられるような体力もない。まで、全然足りない。ほんとに悔しそうに、苦しそうな顔をして言うもんだから俺までちょっとだけ苦しくなる。でもね、私は彼らよりコントロールやペース配分だって出来るし、バッティングセンスだって負けてないよ。そういって無邪気な笑みを浮かべる彼女は昔の彼女と何ら変わらない。違うのは、病院に行ってから自分で切った髪の長さくらいだろう。ちょっとずつ、この人も変わってるんだな。そう思えば少しばかり嬉しい
「そういや瑠鳴って球種どんくらいあんの?」
「さぁ?なんか持ち方変えるだけでいろいろ種類変わるしね・・・・。そういう意味じゃ変化球の球種なんて無限じゃない」
「いや、その中でどれくらいの球コントロールできるってこと」
「3つくらいかな。絶対の自信があるのは。あとはその場の運次第って感じ」
私もっともっと頑張れば、少しは・・・・役に立つかな。手伝えるかな。その問いかけに俺は即答でもうすでに役に立ってんだろ。というと瑠鳴は嬉しそうに笑う。俺はその反対に胸がズキズキといたんだ。あいつが役に立ちたいのも手伝いたいのも哲さんだ。そんなこと百も承知だけど、それでも毎回傷ついちまうんだから俺も不器用なもんだよな。その日も哲さんは自分のプレーで仲間を引っ張った。その姿はキャプテンとして、人として、男として、やっぱりかっこよすぎてちょっとだけ泣けてきた。こんな人が自分のライバルなのか。しかも圧倒的に向こうのほうが有利だしな。勝ち目ねぇじゃん。ずーんと凹んでいるとトントンと背中を叩かれる。振り返るとそこには瑠鳴がいてなんだと思っているといきなり思いっきり背中を叩かれた。いって!何すんだよ!と怒ると瑠鳴は無邪気に笑ってばーか。といって去っていった。ったく、なんだったんだよ。ふと思えば今の一瞬で落ち込んだ気持ちがなくなったのがわかった。って、今のってまさか・・・。もう一度瑠鳴を見ると心配そうに俺の方を見ている。ああ、ほんと、ここで諦めさせてくれればよかったのに。その気もないのになんであんた、そんな優しいんだよ。ひでぇ人だよ全く。でもほんと好きだわ。
走って瑠鳴に背後から飛びついて後ろから抱きしめながらサンキュとお礼を言うと離れろ!と暴れられる。ったく素直じゃねーな。嬉しさのあまり頬が緩みまくりニヤニヤとだらしない顔になる。報われない恋だと分かっていながら終われないのは俺が馬鹿だからか、それとも・・・・


終わらない。終われない

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