他の男
07

クリス先輩が試合に出てる。そう聞いて俺は自主練をすぐにやめて飛び出した。カシャッとさくを掴みグラウンド見るとたしかにあの人はグラウンドに立っていた。そして大きな勝負のかけに勝ち、うまいことアウトを取る。やっぱりあんたはそうじゃなきゃ。試合が終わったあと先輩に声をかけに行くとそこにはすでに見慣れた彼女の姿があった。馬鹿じゃないの!そう叫んで思いっきりクリス先輩の頬を叩く。肩ちゃんと治ってないくせに、何無茶してんのよ!大きな声で彼女がそう叫ぶとクリス先輩は困った顔をして彼女の頭を優しくなでる。すまない。だが、見に来てくれたんだな。ありがとな。クリス先輩がそう言うと瑠鳴は首を横のフルフルと振る。かっこよかった!絞り出した声で彼女がそう言うとクリス先輩が少しだけ驚いて嬉しそうに笑いもう一度礼を言うと瑠鳴は拳を作ってクリス先輩の胸を叩く。その姿を見て周りの3年も集まりわしゃわしゃと瑠鳴の頭を撫で回す。ちょっと、ボサボサになる!と瑠鳴が怒ると先輩たちは笑ってもともとだ。なんて言ってわざと怒らせた。久々にあんな楽しそうに笑う先輩たちを見た気がする。やっぱりあの人がいるのといないのでは違うんだよな。全然
そのあと少しして全員が呼び出され、1軍昇格メンバーのふたりが発表される。その結果は小湊と沢村が選ばれた。俺個人としては、あの人に来てもらいたかったんだけどな。こうなったらもう前しか進めない。選ばれなかった3年以外が練習場から出て行くとその外には泣きそうな顔をした瑠鳴が立っていた。ほかのレギュラーに囲まれながら。俺の顔を見ると顔を歪め何も言わず去っていった。そりゃそうだよな。瑠鳴にとって最初から一緒に闘ってきたのはクリス先輩や3年の人たちだ。俺たちがレギュラーに入っているのはいい気持ちじゃねぇんだろうな。それでも直接文句を言わないのは、監督の事を信じているから。ほんと、つれーな。この立場って。去っていく足を戸を聞きながらゆっくりと目を閉じた。
次の日、瑠鳴はてっきり学校を休むかと思っていたのに普通に登校してきた。驚いている俺と倉持をそっちのけに自分の席に座って荷物を整理し始める。声をかけるか迷っていると沢村くん、だっけ。彼責任感じすぎて無理しそうだからちゃんとフォローしなよ。と言われた。あ、ああ。と戸惑いながら返事を返すとそれから、と次々にレギュラーメンバーの弱点を言っていく。俺には最後の最後になると必ず焦りだすから気をつけるように言われる。どんだけ見てんだよお前。感心を通り越して呆れてしまうほどだ。合宿中私も寮に泊まるから。その言葉には思わずは?と言ってしまった。いやいや、一応年上だよな。うん。もう一度なんて?と聞きなおすとだから、合宿中私も泊まるから、空き部屋に。はっきりそう言われると驚きのあまり俺たちは大きな声を出してしまう。うるさい。と言われるがそんなの仕方ねぇだろ。なんだよそれ。いつのまにそんなことになったんだよ。つか、お前野球部には入んねーって・・・。入らないよ。ただ甲子園前の間のサポートをするだけ。待ってるだけとか、しょうに合わないから。きっとこの前までの彼女ならそんなこと言わなかっただろう。変わったのは先輩たちが彼女に何かを話してから。そして最後に背中を押したのは肩を故障しながらも戦い抜いたクリス先輩の姿を見たからだ。ちぇ。また俺じゃねーのな。お前のこと前に出してやれたのは。悔しい気持ちが溢れてくる。嬉しいって思うべきなのにそうはどうしても思えなかった。
「あんたらもありがとね」
「へ?」
「は?」
「ずっと迷惑だったけどさ。諦めずに声かけてきたでしょ。うっとおしかったけど結構救われたんだよ」
だからありがとね。その言葉がどんなことよりも嬉しかった。

愛の言葉はいらないよ

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