一也くんと言えば、小さくて可愛らしい。私はそう答える。だけど他人から聞く一也くんはなんとも頼もしいことばかりだった。私が就職して3年もあってない近所の男の子。今どうしてるかなぁ。なんてたまに考える程度の存在だった。まさか再開するなんて微塵も考えていなかった。あの頃から、彼は小さな戦士でした


なまえちゃん。私の後ろを追いかけてきてはキャッチボールをしようとなんどもなんども誘ってきた男の子。とても可愛らしくプロポーズまでされたこともある。あれは一生の思い出だ。もちろん子供の戯言だと分かってるけど。本気にしたことはない。ただあまりに何度もいってくれるから、本当にしたってくれてるんだなって思って嬉しかった。



彼氏の母校今すごいらしいの。友達がそう言って誘ってきたのは彼女の彼氏さんの母校、青道高校の練習試合の見学だった。最初は行くといったけどすぐに後悔する。なぜ彼氏と3人で行かなければならない。明らかに邪魔者じゃないか。そう思って席を外したのが少し前。今は木陰でのんびりと過ごしていた。いやぁ、確かにすごかったなぁ。よくわからないけどみんな上手。というかたま早すぎ。今年は甲子園いけるんじゃないかってみんな話してたもんねぇ。すごい学校なんだなぁ。なんて他人事のように考える。事実そうなんですが。お姉さん一人?いきなり目の前に知らない男の人が急接近していて驚いてうわっ。と可愛らしくない悲鳴を上げた。きゃ。とかいってみたいよ。ほんとに。おばさんに何か用ですか。ととりあえず聞いてみるとあれ?わかんねぇの?と言われて首をかしげる。すると男の子はかけていたサングラスとヘルメットを外し、髪の毛をわしゃわしゃとかき混ぜて整える。この顔に見覚えねぇの?そう言われてもう一度まじまじ見てみるが全く身に覚えがない。人違いですよ。とはっきりというとでもなまえちゃんだろ?と言われて目を見開く。なんでこの人私のこと知ってるの?!なに?!私いつのまに高校生と知り合ったの?!合コンとか。いや、行かないよそういうの。苦手だし。顔を真っ青にするとはっはっは。焦りすぎだよ。と言われた。ん?この笑い方・・・・。どこかで聞き覚えが・・・。もう一度顔を近づけてじっと見つめる。一瞬男の子が驚いて身を引きそうになったが肩をグッと掴んで目をしっかりと合わせた。どこかで見たことあるような、ないような・・・・。真剣に悩むとうっすらと頭の中にあの子がよぎる。まさか。あの子はすっごく小さかったよ。この人私より普通に大きいよ?でも、やっぱり・・・・。
「もしかして、一也くん・・・・?」
私がそう聞くと覚えてんじゃん。といってニッと笑う。・・・。エェ?!うそぉ?!本気で驚くとそんなにいい反応ありがとう。はっはっは。と豪快に笑う。あれ?一也くんてこんなキャラだっけ?んー。覚えてるのは本当に少しだけだけどずっと後ろをついてきて、すごく可愛かったよね・・・・。それが今や・・・。もう一度ちらりと一也くんを見るとやっぱり全然私の知ってるあの一也くんには似ていない。なに?惚れた?なんて冗談を言うような子ではなかったしね。こんなおばちゃんが君みたいな若い子に手を出すわけ無いでしょ。なんて言って遠まわしに否定すれば残念。なんて思ってもないことを言われる。どうしてここに?友達の彼氏がここのOBで付き添いで観戦しに来たの。それまたややこしい間に。スゴくいずらいから逃げてきちゃった。やっぱり。なまえちゃんそういうの遠慮しそうだもん。というか、一也くんがどうしてここに?俺ここの選手。しかもレギュラー。え!?嘘?!すごいね!!はっはっは。興奮しすぎ。でもほんとすごいよ。この学校すごくレギュラー争い厳しいって友彼に聞いてたから。確かに、ホントすごい人ばっかりで参るよ。ふふ。嘘ばっかり。へ?すごく楽しそうじゃない。一也くん、そういうの好きでしょ?私がそう聞くと一也くんは少し驚いた顔をしてまた笑い出す。はっはっは。やっぱなまえちゃんにはかなわねぇわ。一也くんよりはお姉さんだからね。ほんと、歯がゆいねぇ。え?なんでもない。そう言うと一也くんはグラウンドを見つめる。そろそろ戻らねぇと。そっか。じゃぁ、頑張ってね。応援してるよ。なんてお姉さんぶってみると一也くんはにやりと笑って私を見る。なんだか嫌な予感。俺さ、なまえちゃんのこと恋愛対象として好きなんだわ。いきなりの発言に目を点にする。頭の中で処理が追いつかない。それを分かっていながら一也くんはまだ私への告白という名の攻撃を続ける。今度の大会見に来てよ。絶対、惚れさせてやるからさ。自信満々にそんな事を言うと私に背を向けて去っていく。あまりに衝撃的な出来事に私はその場に足元から崩れ落ちた



小さなせんしの愛の攻撃

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テーマ「人外ファンタジー」
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