彼女がくれた誕生日プレゼントは何故かどこにでもありそうなトランプだった。それこそほんとに、ていうかこの間百均で買ったのを知っている。一緒にいた時に買っていたのだから。
なんでトランプなんて今更買うのかと聞いたらマジックがやりたいと言っていた。きっと飽きたんだろう。だから俺にこんなの押し付けてきたのか。
高校生なんて金ねぇし、たいしたもんなんてきたいしてねぇ。言葉一つでいいものを逆になんかもらってこれっていう方がガックリしてしまう。言っちゃ悪いが全く嬉しくない。しかもこのトランプマジックのタネか何かで使ったのか端っこに丸い穴があいてそこにリングがついていた。もうトランプとしても使えないだろう。
こんなもん貰ってどうすっか。いつかどっかに行っちまいそうだな。そんなことを思いながら机にほっておいた。とりあえず風呂だ。
風呂からあがり、部屋に戻ると何故か沢村が背中をびくりとはね上げる。こういうときは何かしでかしたんだよな。わかりやすすぎんだろ。おい。とのぞき込むと沢村の手の中にはさっき貰ったトランプがある。どうせ久々にトランプしたくなったんだろ。別にそんなんで怒りやしないのに何でこんなに気まずそうにしてんだ?って不思議に思ってたら沢村に突然土下座された。
「すいやせん!まさかそんな大事なことが書かれたものとはつゆ知らず!!」
「は?」
「いやはや、流石は倉持先輩を選んだお方!!」
「だからお前何言ってんだよ?」
「見てないんスカ?これ」
沢村に見せられたのはトランプの表側。そこにはヤンキー顔。とだけ書かれていた。ただそれはトランプに直接書かれてたわけではなく、小さな折り紙に書いてあり、可愛らしいテープやら、シールやらでデコレーションされていた。
「なんだこれ?」
「倉持先輩のいいところっすよ!」
「どう考えても悪口だろ」
「知らないんすか?これ今流行りのトランプに相手の好きなとこを書いていくってヤツっすよ」
「今のはどう考えても悪口だろ」
「そこも好きってことっす!」
なんだそりゃ。呆れているととりあえずちゃんと見てあげてください!と沢村に押し付けられてトランプをめくって1枚ずつ見ていくとそれはもう見てられないほどこっぱずかしいものばかりで途中で投げ出したくなる。なのに沢村がちゃんと!全部!ってそれを許さないからなんとか全部を読み終えた。
「あれ?このカード後ろにも文字書いてあるっすね。」
「ホントだな。・・・てめぇが順番めちゃくちゃにしてるからわからねぇだろ!」
「た、たぶん数字の順番だと思いやす!!」
「マークは?」
「それはとりあえず並べていったらわかりますよ」
沢村がいそいそとカードを並べているのを見ながらふと今頃あいつが何してるのかが気になった。きっと俺がこれに気づくのを期待して待ってるだろう。早いとここの裏の文字並べてから連絡してやろう。こんなもんなんて思っちまってごめんとも謝ろう。どんだけ時間がかかったものだか、見てすぐにわかる。好きなとこなんてトランプ1セットも考えるのはかなり難しい。それを書き出して、デコレーションまでして、しかもそのデコレーションのシールやテープはいつもあいつが好きな色合いじゃねぇ。きっと俺のために買ってきてくれたんだろう。野球のシールなんて、あいつが持ってるわけねぇしな。
できやした!の声を聞いてカードを見ると沢村はニヤニヤした顔で俺を見た。その頭を1発殴って携帯を握り、外に出ていく。
電話をかける相手はもちろんなまえ。とりあえず最初にお礼をいって謝って、その後この文のことを言ってやろう。あれ後輩も見たからなって教えてやろう。きっとあいつだってかなり恥ずかしい思いをするだろう。まぁ俺は気恥ずかしさより嬉しさが勝ってたけどな。

「Happy Birthday!あなたの魅力に気づけて良かった!出会えたこと!好きになれたこと!とても幸せなこと」

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