中学校の頃は良かった。ヤンチャしてるけど、週に一度は私と遊んでくれたし、電話だってしてくれた。愛されてると思ったし、安心していた。それが変わったのは推薦で行った高校から。
毎日厳しい練習。最初の頃は連絡をとっていた、なんてこともない。パタリと途絶えてしまった。大会が終わると連絡をくれて、また切り替える頃には音信不通になる。
我侭をいったり、酷いこと言ったりもできない。だって連絡がつかないんだもん。未読のまま動かない携帯の画面をみてお前はゲームする暇はあっても私に連絡とる暇はないのかと怒りが湧いた。
ムカついたから合コンに行ってやった。私をほったらかしにするあいつが悪い。そこで仲良くなった男とこ写真を送った。そしたら良かったな。なんて返事が来てもう既読はつけれなくなった。死ぬほど後悔した。だってこの返事って、洋一の中では私は終わってたってことでしょ?怒るのでもなく、呆れるのでもなく、無視するわけでもない。良かったな。なんて言葉一番嫌だ。こんなことならずっと無視してくれてた方が良かった。
洋一との関係が壊れてあっという間に時間は過ぎ、とうとう大学生になった。大学は関西の方に一人暮らしをする形でいくことにした。自分の学びたいことがある大学が関西だったからだ。あれ以来、お付き合いをしたことは無い。あの時の男ともその後1度も連絡を取らなかった。次の恋を探したかったけど、それはあまりに難しかった。洋一はあまりにかっこよすぎた。この御時世、草食男子とか言われてる男は正直女より女々しい。女の方がカッコイイって思えるくらい。カッコイイ男なんてほんの一部だ。その一部にいた人と初めてのお付き合いをしたからか、ついつい高望みしてしまう。
女や後輩に負けたらグチグチ言い訳をいいだし、挙句の果て、関係の無いその人の悪口を言い始めるやつ。デートに自分から誘ってきたくせに全くプランなく、グダグダに終わる計画性のないヤツ。平気で遅刻してくるやつ。そんなのばっかり私の周りには集まった。
ゴールデンウィークに久々に実家に帰ると懐かしい我が家になんだか安心して目頭が熱くなる。久々の帰宅にお母さんは腕をふるってごちそうを用意してくれた。20を過ぎてから初めての帰省。お父さんにもお母さんにもお酒を進められ、進められるがままに飲んでいく。すっかり酔ってしまい外の空気で酔を覚まそうとベランダにでると煙たい匂いに顔をしかめた。
「あ、悪ぃ。」
ドクンっと心臓が大きくはねる。ゆっくりと顔を横に向ければお隣のベランダには洋一がいた。その手にはタバコが握られていてこの煙たさの正体も分かる。
「タバコ吸う人嫌いなんだよね」
「久々にあってそれかよ」
「何カッコつけてんの、ダサ」
「はぁ?」
「タバコなんて吸ってたってかっこよくないし!体に悪いだけですよ〜」
精一杯の強がりだ。突然の再開、強がらないと泣いてしまいそうだった。お酒の力を借りてとんでもないことを口走りそうだ。
「婚約、おめでとう」
「は?」
「お母さんに聞いたよ。おばさんが洋一が玉の輿に乗るって嬉しそうに話してたって」
「んだよそれ。」
「会社のお偉いさんの娘さん酔っ払いから助けて惚れられて、お見合いすることになったんでしょ?」
「・・・。」
「否定しないんだ。まぁ、断る理由もないでしょ?」
「そういうお前はどうなんだよ。」
「へ?」
「彼氏、今いんのかって聞いてんだよ」
「あー、理想高すぎて今いないわ。」
「なんだそれ」
ヒャハハ。と大きな声で笑う。久々に聞けたその笑い声が酷くいとおしかった。自分から壊した癖に、ホント都合がいい。また、こんな関係に戻れるかな。ずっとこの気持ち黙ってたら、友達に戻れたのかな。戻りたいという気持ちはある。でも、もし素敵な奥さんがてきた時、きっとこらえきれなくなるから。洋一をこまらせて、傷つけてしまう。言ってしまった方が楽になる。お酒のせいにしてしまえ。最後の、意地悪だ。
「私さ、ずっとかなわない片思いしてんの。今も」
「へー。」
「ちょっと、もっとちゃんと聞いてよ」
「へいへい」
「そいつさ、結婚するんだって。それ聞いて今日は勧めるがままにやけ酒。思ってもないおめでとうなんて言葉いってやったの」
「言ってやれば良かっただろ。そいつに、最後に嫌がらせしてやれよ」
「同じ事考えた。そんで今からしようと思ってるの」
「は?」
ずっと好きだった。彼氏なんて今までの人生で1人だけ。洋一があんまりにかっこよすぎて理想高くなってずーと、独り身。そのぐらい、好き。好きで、ごめん。
「おめでとう。幸せになってね。思ってもないけどいってあげる。」
最後の意地悪だから。そういってベランダの窓を開けて部屋の中に戻る。こぼれる涙を隠すためにお風呂場に急いで声を殺しながら終わってしまった恋を悲しんだ。

隣のベランダに告げる

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テーマ「人外ファンタジー」
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