普段我が家のお父さんは忙しい。今日だってどうせお仕事なのだ。働いてもらってるから感謝はしてる。けど息子はそんなお父さんに似たのか我侭や弱いところを見せるのをよしとしない。そんな息子が今日は父は帰ってくるのかと私にたずねた。珍しいことだった。そのことをそのままお父さんに伝え、今日中に戻ってくると言っていたのに連絡が付かないまま時計の針は11を指し、音楽が流れ出す。
今日は起きて待っていると頑張っていた息子はすっかりと夢の中だ。帰ってきたら起こすからと約束してなんとかソファーで眠ってもらった。必然的に私は起きておかなければならなくなったのだが、ほんとに眠い。息子と一緒にいつもならもう寝てる時間なのに。
結局戻れそうにないと連絡が来たのは子供の日が終わった夜中の2時だった。久々のオネダリだったのに。眠っている息子をゆすりお越し、お父さんが帰ってこれなくなったことを教えて一緒に寝室に戻る。寂しいね。と2人で言った。
戻ってきた父に息子は日曜日は帰ってくるのかと自分で聞きに行った。珍しい。普段からあまり父に自分から話しかけに行ったりしないのに。たくさんのプレゼントを持って、すぐに謝ろうとしていたお父さんは驚いた後、すぐに予定を確認して難しいかも。というと息子は帰ってこなくていい。と言いきった。それにはさすがのお父さんもショックを受けて石になる。そんなやりとりを見ながらどうやってフォローを入れておこうか考えた。
日曜日、息子に朝起こされた。思わず寝坊してしまったのかと慌てて飛び起きたが時間はいつも通りだった。お父さんも同じように起こされたらしくまだ寝ぼけた顔をして一緒にリビングに歩いていく。
ふんわりと香ってきたのは美味しそうなご飯の匂い。いい匂い。と鼻を鳴らしながら思う。
リビングの中に入って目に入ったのは美味しそうな朝食。驚いていると息子は早く席に着くようにと急かした。二人とも困惑しながら席に座るとキッチンに消えた息子が何かを手に持ってやってくる。
「はい!」
小さな手をいっぱい伸ばして渡されたのはカーネーションの花が刺繍されているハンカチ。そしてお父さんには野球の刺繍が施されているタオルを渡していた。
「どうせ父さん忙しくて父の日いないでしよ?だから母の日にまとめてしようと思ったんだ。だけど夜帰ってこないっていうから朝に急遽変更したんだ。」
「それでご飯も?」
「うん。母さんに何度か教えて貰ってたから美味しいんだよ!早く食べて」
せかされるままに1口お味噌汁を飲むとほっこりと温かく優しい味に癒され二人そろって涙がこぼれてきた。
「もう、一也今から仕事なのにそんなに泣いて大丈夫なの?」
「こんなことされて泣かない親いねぇだろ!あー、くそ。止まんねぇ」
「ほんとね。ありがとう。」
「ありがとな」
2人でお礼をいうと息子は照れくさそうに笑い、どういたしましてという。子どもの頃、母はこんな気持ちで私を見守っていたのだろうか。ああほんとに、幸せすぎて溺れそうだ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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