※シングルスノウの続き

風邪をひいた。あのまましばらくあの公園でめそめそ泣いて帰りついたらすぐに布団にだいぶした。お風呂にもつからず寝たのが悪かったのか、起きた時にはひどく息苦しかった。
悲しいことに一人暮らしとは誰かに気づいてもらえることもなく、ただ耐えるしかない。薬もあるけど胃に物を入れずに飲めばもっと苦しい思いをするだろう。自力で少し回復するのを待つしかなかった。
夢をみた。亮介がいて、私はその背中をずっと見つめてるのだ。亮介は知らない女の子と歩き出し、私の方を見向きもしない。まって。って何度も叫んだし、名前も何度も呼んだ。それでも亮介は私を見ない。行かないで。そう強く願った。
うっ。と唸りながら体を起こす。ひどく汗をかいていた。そうか、夢だったのか。それにしてはひどい夢だった。体がベタベタして気持ちわるい。なんて、嫌な夢だ。夢くらい夢を見させて欲しい。
「起きた?」
「へ?」
「おはよう」
ニッコリと笑う亮介が目に入る。あれ。まだ夢の中かな。亮介が部屋に来るなんて、いつぶりだろう。りょー、すけ。甘えた声で呼ぶと困ったような、嬉しいような複雑な顔をしてなに?と聞き返してくれる。そんな顔がたまらなく好きだったのだ。
「りょーすけ」
「はいはい、聞こえてるよ」
「すき。」
「うん。」
「りょーすけが、すき。だーいすき。」
「お前ね、病人があんまり煽らないでくれる?」
「ふふ。だーいすきなの。」
「知ってる。俺も好き」
幸せな夢。嬉しくてニコニコしてると熱で頭おかしくなったんじゃない?なんて照れ隠しの言葉を聞いてほんとにリアルな亮介だなって思った。ああ、でも、もう。眠たい。
あまり力の入らない手を持ち上げて亮介の前でひらひらと動かす。今だけ、握ってて欲しい。そうお願いすると治るまでずっとそばにいるよ。って優しく言われた。そんな事言われたら、風なんて一生治らなくていいなんておもっちゃうよ。
「どうせ都合のいい夢でしかないんだろ」
「うん。夢だもん」
「じゃ、次目を覚ましたらびっくりするだろうね」
「寂しくなって泣いちゃうかも」
「そうならないようにしとくから、安心して寝ていいよ」
ずっと不安な思いさせてごめんね。こんな俺と一年付き合ってくれてありがとう。これからも離す気ないから、よろしくね。欲しかった言葉は夢の中では沢山もらえてそれが嬉しくもあり、悲しくもあった。
「どうせお前には夢なんだろうから、また起きた時に同じ事言ってあげる」
だから今は安心して眠りな。優しく頭をなでられたらあっというまに睡魔に飲み込まれて次に目を覚ました時これが夢でなければいいな、なんて思って眠りについた。

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