洋一くん。いつもあいつはそうオレを呼ぶ。幼馴染のそいつは俺とは普通なら縁もゆかりもなさそうなやつ。平和ボケしてて、ドジで、ホント危なっかしい。どれだけこっちが心配しても本人は全然危ないとか思ってねぇ。俺のせいで面倒な奴らに捕まりそうになった時も笑いながら俺の名前を呼んで手を振るような奴だ。ようは馬鹿なんだ。あいつは
だからずっとあいつを守るのは俺の役目だと思っていた。ずっとずっと隣にいるんだって、勝手に思い込んでいた。あいつ以上に何かを求める自分が想像つかなかったんだ。本当にあの頃はこんなふうになるなんて思ってもみなかった
「なんだか、まだ実感がわかないや」
電車の入口であいつはそうポツリとつぶやいた
「明日から洋一くんがいないなんて。ホント、わからないよ」
俺だってわからねぇよ。お前のいない日常なんて。想像なんてできるはずねぇだろ。でも俺は、どうしても野球がしたい。。そう。俺はであっちまったんだ。あいつ以上のものを。こんなふうになるくらいなら言っとけばよかった。。時間はたっぷりあるなんて余裕ぶっこいてないで、さっさとこの気持ちを伝えときゃよかった。そしたら、そしたらこんな時、こんな泣きそうなこいつを抱きしめれたのに。泣けよ。そしたら仕方ねぇな。って言い訳を言って抱きしめれるのに。だだこねろよ。俺と離れたくねぇって言えよ。そう言ってくれれば、俺は・・・・
「いつも、いつもたくさん迷惑かけてごめんね」
「何いまさら言ってんだよ」
「ほんとに、今更だけど・・・。ずっとずっと言いたかったから」
今にも涙がこぼれ落ちそうだ。それなのにあいつは必死に泣くまい。と歯を食いしばって涙を止めていた。電車が発射する合図の音が鳴る。俺は一歩下がってそのまま車内に入り込んだ。それを見てあいつは慌てて目の前まで駆け寄ってくる
「ありがとう。ほんとに、いっぱいいっぱいありがとう」
ギュッと俺の手を握ってるあいつの手は小刻みに揺れていた。ドアが閉まり、あいつと俺の間に一枚の壁が入る。。あいつは入口の窓にバンバンと叩いて涙をぼたぼたと散らす。
なんで、なんで手の出せなくなった時に泣くんだよ。なんで今なんだよ。。もっと早く泣いてたら、この手で抱きしめれたのに
「私っ・・・わたし、洋一くんとずっと一緒にいたかった」
泣きながら叫ぶように言われた言葉に目を見開いた
「だから、なんで今何だよ・・・・」
もっと、もっと前に言えよ。。こんな時に言うな。戻りたくても戻れない、こんな時に
「だから、だからっ・・・ずっと応援してるから・・・っ」
電車がすこしずつ動き出す。それと同じようになまえも走って俺のいる入口を追いかける
「だから、お願いだから・・・私のこと、少しでもいいから・・・覚えててっ」
「忘れられるわけねぇだろ!俺は、お前のことがっ」
電車の速度が速くなる。ホームもあと少ししかない。もう、あと何十秒しかコイツといられない
「わたし、洋一君が好き!世界で一番好き!大好きっ」
最後に大きな声で叫ばれた言葉に体が硬直する。われに返って慌てて窓にへばりついた頃にはあいつの姿なんて見えなかった
「馬鹿やろ・・・っ」
俺だってお前のことが好きだよ。ずっとずっと前から。そしてずっとずっとこの先も



甘え方を知らなくて
(もっと早くその言葉が聞きたかった)

planリーブラの思慕さまに提出



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