俺のような人間は忙しい。シーズン中は試合に出て、オフシーズンはバラエティなどに引っ張りだこ。どこにいっても誰といても人気者。女は腐るほど寄ってきて、それなりに遊んだりもした。それでもどうしてもここに戻ってくる。この何のとりえもない変な女のところに。
「なー、いい加減俺と結婚し」
「ません」
「じゃぁ恋人でもいいから」
「なりません。というか、いま彼女いるでしょ」
「いたことないし」
「あまり派手なことしすぎないように。好き勝手に週刊誌に書かれてたよ」
そういって投げ渡されたのは小汚いことばかり書いてる週刊誌だ。それには俺にはコイビトがいる。それも3股もしてると書かれていた。こんなところまでも人気なのか。まぁこんなの気にするたまでもないけどさ。これをこいつが信じたっていうなら話は別だ。信じた?と聞くと目に入った話題、という程度の認識ですね。とはっきりという。気に留めてくれてないのは気になることだけどそれでもこればかりはよかったと思う。
時間ができるたびにこいつの家に行き、外に引っ張りだしたり、いえでまったりしたり。コイビトらしいことをしてるっていうのにこいつはこっちをちらりともみやしない。それどころか邪魔者扱いってどうなのさ!このスーパー有名人の成宮鳴さまだぞ?!どうなんだよそれ!俺もなんでこんなやつばっか・・・・・。こいつのなにがいいのか自分でも疑問しかない。
この間メールを無視されたばかりのあいつからメールが入っていた。今は読む気になれず取り合えず携帯を放り投げてベッドに横になる。すると突然ガチャガチャとドアノブがいじられる音がして、しばらくするとひょっこりなまえが顔を出した。合いかぎ渡してるからこれて当然だけど、連絡くらいしてくれないとこっちにも準備っていうものがある。いや、そういえばさっきメール来てたけど携帯ほったな。俺の顔を見るやいなやげらげらと笑いこの間の試合ひどかったらしいじゃん。といってにんまりと嫌な顔して笑う。くそう。うるさい!と叫ぶとまたなまえはけらけら笑いキッチンに消えていく。うちのお母さんのおいしい煮物、今日遊びに行って来たついでに分けてもらったから酒の当てにして食べよう。なんていって勝手に冷蔵庫をあさりだす。うわ。ほんとお酒だけは常備いいんだから。なんて言いってるけどそれはお前がお酒好きだからであって断じて俺が一人飲みするように買いだめているわけじゃない。俺はお前みたいにそんな安い缶に入った酒じゃなくても飲み放題だし。そんな安っぽいの好きなわけじゃないし。俺が寝そべっていたソファーにやってきて缶を一つ渡される。そして渡されたのはやっぱり甘ったるい酎ハイだ。自分はさわやか系の酎ハイ握って俺にこのチョイスをするのはほんとにこいつらしい。
「相変わらずビールは飲まないんだ」
「大人ぶってビール飲めます!なんて言いたくないもん。私は酎ハイを愛してるからいいの」
グラスに注ぐわけもなく、当たり前に缶のまま口づけてうまそうに酒を飲み下していく。俺も同じようにして酒を体に流し込みくそう!と思いっきり叫んだ。うまくいかなかった。なんでか落着けなかった。あのとき、もっと冷静になれていたら。あのとき、もっと自分を。そうやって後悔なんて高校生のころから何度もしてきた。自分でも自覚あるくらいへこむときはとことんへこむ。そんなとき、こいつは凹みすぎないように俺をへこませるだけ凹ませて外に発散させるのだ。引きこもりになりそうなところを引きずり出してくる。
「お前もさっさと俺と結婚すりゃいいじゃん。」
「うはは。それはいいかんがえだね。うん。すてき」
「棒読みするな」
「じゃぁ、気持ちの悪いことを言うな」
この不毛な言い合い、嫌いじゃない。だんだん沈んでいく意識。そっと隣の体温に体を預けゆっくりと目を閉じた。ああ、お前といるのなんかすっごく落ち着くんだ。だからお前がいいんだ。料理だって掃除だって苦手で、ガサツで、馬鹿だけど。
「寝るから適当にしといて」
「わたしベッド借りるわ。ソファーで寝て体痛めたって明日文句言うなよプロ野球選手」
いちいちむかつく。せっかくいい気分で寝れそうだったのに!わかってるよ自分の体調管理くらい!俺だってそっちで寝るし!と叫ぶとなまえはおかしそうに喉を震わせた。

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