No.4番外編 高校生

何気ない、ほんとに何気ないことだったと思う。御幸とケンカをした。まだ付き合ったばっかりで慣れないことが多いから仕方のないことだけど内容が内容だけにどう収拾つけていいかわからない。だからお互いに近くにいる癖に口は利かなかった。絶対御幸は私の隣に来るのにスコアブックを見つめる。わたしは御幸が隣に来てくれるのをわかって顔を伏せて狸寝入り。なんだこの距離は。そう倉持に突っ込まれても仕方がないと思う。
御幸が自分の恋人だという感覚にまだなっていない。だからか余計にケンカをしてるのかもしれない。つい売り言葉に買い言葉。最初のころのやさしさがウソのようだ。必死に私を落としにかかってた頃の御幸は媚を売ることはなくても私のことを考えてくれたのに。今は何だ。いつもいつもスコアブックばっかり見つめて。だったらどっかいけばいいじゃないか。私だってそのとき先生のところに行くし。お互いにとっていいはずじゃないか。なんて口にはできないけどそう思ってる。
たしかに御幸に傾きだしているのは事実だけどそれでも先生への気持ちが消えてるわけじゃないし、それでもいいからと言って付き合ってみてはいるものの。想像する恋人と実際の恋人というのが違いすぎて頭が痛いくらいだ。なに。世の中の恋人ってこんな険悪になったり、恋人と一緒にいるのに何かに没頭したりするの?話がしたい、声が聞きたい。そう思うのはおかしいの?なんて、怒ってても意味はない。ここは大人になるべきなのだ。自分がそう思っているいじょう。

「いつまでこうしてるのわたしたち」
「・・・・・」
「ねぇ、いい加減仲直りしようよ」
「・・・・・・」
「ねぇってば、御幸。ねぇっ」

どれだけ声をかけて見御幸はピクリとも反応しない。これは無視してるんじゃない。本気でスコアブックに集中してるのだ。なんだ。なんだそれ。そんなに集中したいなら勝手にすればいい!!あんたなんか知らない!!ばっと立ち上がって教室を出る。そしていきなれた一つの教室の中に飛び込む。

「お前は毎回毎回なんでそんな勢いよく入ってくるんだ。びっくりするだろ」
「イライラしてるの!もう!意味わかんない!」

カルシウム足りてないな。といってけらけら笑う先生をにらんでソファーに倒れこむ。いいさいいさ、どうせ男なんてそんなもんだろ。手に入った瞬間から輝きなんてなくなって見えるんだろ。あああ!!むかつく!!

「お前がそんなに感情あらわにするなんて珍しいな」
「もう!だって!だって!!」
「なんだ?御幸と喧嘩でもしたのか?」
「相手にもされてないですけどねー」

うわーと騒いで一通り先生を困らせるとなんとなくすっきりしたので遅刻にはなるが授業の始まっている教室に戻ることにする。じゃねー。またくるね。ストレスで剥げたらお前のせいだからな!お姉ちゃん禿でも愛してくれるといいね。禿嫌いだったかも。あ。先生どんまい。帰れ!帰りたい!あはは。じゃーね。
教室を出るとなぜかドアの横に御幸が座り込んでいた。ぶすっとしたかおで。なによう。別に。ふーん。あー、もう!くそ。なんて叫ぶと御幸は私の手を取って歩き出す。やきもちやいたの?やかないわけねーだろ。なんだよ、まだあいつがいいのかよ。完全に拗ねてしまった御幸をみて私の機嫌は逆によくなっていく。

「ざまぁみろだね。これに懲りたらスコアブックにばっかかまってないでよ」
「そんなに俺にかまってほしかったの?」
「うん。かまってほしかった」

私が素直にそういうと御幸は驚いた顔をしてそして照れ臭そうに次から気を付ける。そういってつないでる手に力を込めた。その言葉が胸をぽかぽかと温める。ああ、小春日のようだ。

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