ナイショ番外編 モブ視点 付き合う前

高校の同窓会。今まで一度も出席してなかった人が出席した。驚いて御幸くんの亡霊だ。なんて失礼なことをいってしまった。本人は気分を害したとかもなくケラケラ笑っていたけどわたしからすればかなり恥ずかしい。ほんとにごめんなしい。
そんなお陰で席はとなりになったのだが、ちょこっと緊張する。相手はプロ野球選手で、イケメンさまだから。どにどきしてもしかたないとおもう。隣の倉持くんとばかり話すのは昔から変わらないね。けど、あれ?

「なんか御幸くん雰囲気変わった?」
「どういうこと?」
「え。あれ。今の私声に出してた?!」
「うん。普通にしゃべる感じで出してた。」

で、どういう意味?と隣にいる本人に聞かれうーんと悩む。はっきりとしたものじゃない。けれどなんだかちょっと馬鹿っぽく見えるじゃなくて、人間味がみえてきた。これも違う。ちょっとさすがにひどくね?ヒャハハ。すんげぇいわれよう。ざまぁねぇな!あー違うくて!えっと、えっと、そう!幸せそうなのだ。は?なんかよくわからないけど充実してますって以上に、幸せそうな顔してる。だからちょっと間抜けそうに見えるというか、なんというか。幸せ、ねぇ。
身に覚えがあるのか御幸くんはにやにやと笑う。それをみて倉持君はげんなりした顔をする。なになに。と聞くとえー。とかいってじらしてくる。なんだよもう。いいじゃん。んじゃ、これはここだけの秘密な。りょーかい!んで、なになに?俺好きな子ができたんだ。へ?恋とかどうとかそういうの興味なかったんだけどあいつだけは特別でさ、好きだし、なんかこういとおしいって思うし、閉じ込めておきたいって独占欲まで湧いてわいてくんだよ。野球以外で。

「やめとけみょうじ。こいつにこれ以上聞いてもいいことねぇぞ」
「こいつこうやっていっつも話聞いてくんねーの。惚気させろよ」
「付き合ってもねぇけどな!」
「もうさ、恋人通り過ごして家族にでもなってみるってのはどうよ?」
「そんなことしてみろよ。二度と日の光を浴びることはねぇよ」
「あいつがいたら一生日の光浴びなくてもいいって。野球できれば」

我儘放題いう御幸くんにとうとう倉持君が怒る。それを笑いながらちくりと痛む胸を抑えた。そう、だよね。あの御幸君を同窓会に出席するような人じゃなかった。けど、そんな御幸くんをきっとその人が変えたんだ。

「おめでとう、御幸くん」
「ありがと」
「だからまだ付き合ってすらねーよ!」
「お前と違ってみょうじはわかるやつなんだよ」
「あはは、そうじゃなくて。素敵な出会いがあったみたいだからってこと」
「違うとよ」
「やっぱわかってないやつだったわ」

御幸くんは覚えてるかな。高校の時わたしが3年間同じクラスだったこと。だからよく声をかけたしほかの人に比べたら声をかけてもらってたこと。日直とかさ、しょうがないなって日誌をもっていってあげたりして。そしたら御幸くんは次の日ジュースおごってくれるの。わたし、そんな毎日が宝物みたいに大事だった。大事だったんだよ。
まだ何かを言いあう二人を笑って、ちょっとお化粧直してくる。といって立ち上がる。そしたら二人そろって直すほど化粧してるか?とかいうから思いっきり足を踏みつけてきた。ヒールじゃないだけありがたいと思え!お座敷だからね!それに化粧はね、今から崩れるんだよ。
お金は先に幹事に払ってるから大丈夫。お店の人に一言告げてから外に出て駅のほうに歩き出す。初恋ではなかった。初恋はむしろ実ったよ。中学生のころ。3番目の恋だった。なのに一番好きだと思ったよ。こんな風に涙をこぼすくらい、好きになったんだよ。卒業して会えなくなっても、その日々とともに積もっていくような、恋だったんだ。

「すき、だったんだよ・・・・あんたのこと」

幸せになればいいなんて言えるほどいい子じゃないし、お人よしでも馬鹿でもない。でも、だけどさ。ちょっぴり。うそ。かなり苦労して大変なあとなら、幸せになればいいと思うよ。その時には私はあなたより素敵な人を見つけて見せるから。
さよなら、冬にみをつけてしまった咲くことのなかった恋心。

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