「金丸って明日暇?」
「あー・・・一応特別な用事はないな」
「じゃぁ明日ちょっと付き合ってよ」
そう言われて別にいいか。と了承した俺今すぐ出てこい!ぶん殴ってでもとめてやる。コイツの頼みがまともなものじゃないってことぐらい知ってるだろ。目の前にいるのは全く俺の知らない女だ。少し洒落たカフェに連れてこられ何の話が始まるのかと思えばほら、こいつが女房。ととなりのバカが言いだしたのだ。は?と言いそうになった言葉を飲み込み、状況をとにかく理解しようと頭を動かす。なのに目の前の女に号泣されればさすがにそれどころじゃなくなった。
「わ、わたしのことは、遊びだったんですか・・・っ」
「いや、遊びって・・・それ以外何があるの?ちょっとびっくりだわ」
俺はお前の発言にびっくりだよ。お前どんだけ遊人だよ。そのセリフ男なら憧れてる奴多いだろ。しかも目の前の結構美人なんだけど。てか一番突っ込んでいいのかわからないのはなんとなく修羅場的場面と理解したがその相手がなぜかこのバカと同性なのだ。ん?ほんとこれどういうことだよ。なに?お前何してんだ?どうしてこんなことなってんだ?
「あのさ、これでもこちらも多忙なわけだよ。久々の休日をこんなふうな無駄遣いさせられてるってこと、わかってる?」
「で、でも私っ納得できません。そ、そんな人のどこがいんですか?顔だって怖いし、頭も良さそうじゃないし、不良みたいな顔してる人ですよ?!」
「ほー。悲しいくらい否定できんな」
「そこは否定しろ!」
思わず癖で頭を叩くとほら暴力的!野蛮!とまで言われた。や、野蛮・・・。地味に凹む。それなのに隣にいるバカはけらけらと笑い野蛮。野蛮だって。野蛮なんだって。とツボにはまったらしくお腹をかかえていた。ああ、野蛮でもなんでもいいからもう一発殴りてぇ。ここが店の中じゃなかったらやってたな。でもさ、こいつ。顔怖いけど困ってる仲間とかほっとけない人でさ。定時に上がれるっていうのに仲間の仕事手伝って残業してんの。昔の仲間がいきなり家に押しかけてきても怒るくせに結局家の中に入れて、飲みつぶれたら布団までかけてんの。頭はそりゃ君に比べれば馬鹿かもしれないけど真面目だし、気配りも出来る。頭が人間の全てってわけじゃ全くないしね。それに見かけなんて言われちゃ、私の耳の方が痛いわ。それにこいつ料理大雑把だけどなかなかいい味してんだよ。私がどんな無茶なこと頼んでも聞いてくれるし、それに、・・・・
「何もなかった私にこいつは昔のよしみってだけで居場所をくれたんだ。帰る家をくれたんだ。君がそれ以上のものをくれるとは思えない。よって君がコイツ以上になることはない」
はっきりとそうなまえが言い切ると彼女は黙って席を立って会釈をすると逃げるように去っていった。ふぅ、となまえは大きく息を吐き目頭を押さえる。まったく状況が理解できなかったんだが。俺がそう言うと私もわからん。と言い切る。まずなんでこうなった。ととりあえず経緯を聞けば仕事で彼女と出会い、よく連絡をもらい、頻繁に外出に誘われ、断っていたが余りにもしつこく、ついには前どうしても仕方のない外出(酒が切れて買出しに行ったときのこと)で外に行った時に見つかり、それからずっと周りをうろつかれていたらしい。面倒だから何がしたいのかと問えば同居させて欲しいと言われたらしい。即答で無理。と答えると理由を聞かれ、ここ女房の家だから。と適当にいってみたらうそだ!でわやわや。と省かれたがなんとなく想像できる。さて、ここから突っ込ませてもらおう
「まず、お前の仕事ってなんだよ?どんなことしてたらこんなことになるんだよ」
「制作という仕事だな。まぁ、いろいろしてる」
「いろいろってだからなんだよ!」
「本の執筆、クスリなどの研究、評論家、情報サイトの運営、小さな会社の社長だ。あとまぁ、おいおい話すよ」
頭がいいのは知っていた。けどこいつ今どんだけ職業あげた?この職業なんって時になんでバイトの掛け持ちみたいなノリでそんだけ仕事持ってるんだよ。芸能人か!本ってどんなのだ。大したものじゃないが、これとかだな。そういって彼女がネットで検索した本をみるとちょっと前に話題になった本だった。その原稿というファイルを開き、文字数などのことで書き出せなかった話も見せてくれる。小難しすぎて俺には理解できない。
「社長って、どんな会社だよ」
「情報売ってる。本を書くためにいろいろ調べてたら情報が膨大でさ。これは金になると思った」
「お前マジで何者だよ」
「金丸の先輩も客の一人だけど」
先輩?ピンクの小さい男。そういわれて思い浮かぶのはたった一人、恐ろしい人だ。あの人とこいつにそんなつながりがあるなんて誰が想像しただろうか。最悪なコンビだ。そんなの俺は敵に回したくねぇ。
「なぜだかよく同性に言い寄られるんだよ。まったく、世の男がふがいないばかりに私はモテモテだよ」
「さっきの美人がいるだけに言い返せねぇけど自慢に何のかそれ」
「どうだっていい。お酒と金丸がいれば何でもいい」
突然言われたことに目をぱちくりさせているとなまえは首をかしげて何?と聞いてくる。この野郎。恥ずかしいことを恥ずかしげもなくいいやがって。こっちがどんだけ照れ臭いと思ってんだ。今のが何か考えていってないってことくらいわかってる。だから余計にむずがゆくて仕方ない。まったく、なんで俺の周りはこういう馬鹿が多いんだ。
「金丸なんか顔赤い?熱?それはいけない。お酒帰りに買っていこう」
「なんでそうなんだよ!」
「酒粥でも作ってやろうかと思って」
「病人食をそんな体壊しそうなもんにするな!!」
ん?そういや俺って酒と同等の扱いなのか・・・。そう思うと途端に気落ちしたのも仕方のないことだと思う。

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