恋人?って聞かれたらううん。違うよ。とかえす。毎回その度に聞いてきた相手は嘘だといった。でも事実だ。わたしとかれは恋人じゃないし、なる予定もない。わたしとかれは兄弟のような、友人なのだ。大学に彼がバイクにまたがって迎えに来た。飲みに行こうと約束していたからだ。わたしはいつも通り彼に会うと笑顔で飛び付いた。これは習慣的なもので、他意はない。けどびっくりされる。
迎えに来るのはなにも約束のある日だけじゃない。なにも言ってなくても突然待ち伏せされてたりなんか当たり前だ。それを嫌だとも、気持ち悪いとも思ったことはなくて、寧ろいい意味で当たり前のように馴染んでいる。
「倉持とわたしって恋人になるの?」
一度だけ聞いた質問に倉持はなんだそりゃ。と笑った。だからならないんだと思う。確かにこれが恋かと聞かれて恋とは答えないくらいに倉持に恋してない。たぶんこの距離が一番いいのだ。
それなりに恋人がするようなことはするし、二人で出掛けるのだって当たり前だ。でもそれは恋人とての触れあいでも、デートという名もつかないのだ。
倉持、今日帰り遅くなる。なんかあんのか?合コンに誘われて。飲みすぎるなよ。わかってるって。帰る時間とかわかったら連絡するね。危ない通りの店には行くなよ。飲み屋の近くにそういうホテルがあるのは仕方ないことだよ。
お母さんのような小言も受け入れれるくらい私たちは心を許していると思う。倉持が合コンのとき同じことをわたしは口にしている。お互いわかってることを繰り返して言うのはわかってても心配だからだ。倉持は男は狼だといい、わたしは女は魔女という。
カンパーイという声を響かせそれぞれのお酒を体に流し込む。そこからはたわいない話をしてほんとに彼氏いないの?彼女いないの?みたいな話になってわたしもいませんよ。と答える。生まれてこのかた彼氏さんなどできたことがない。
「なまえちゃんは彼氏ほしいとか思ったことないの?」
「うーん、思ってもできるようなタイプじゃないですしわたし」
「じゃあ今日はただの気晴らし?」
「そんなかんじです。ダメでしたか?」
「ううん、全然」
それからその人と色々話してあっという間に時間は過ぎて合コンは終了。お会計をしてお店を出る。うまくいった人は二人で帰り、そうじゃないものはぐだぐだしながら駅に向かう。そのときもずっと変わらず声をかけてくれるのは合コンのときに話してたひとで相槌をウチながら駅まで歩いた。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「いえいえ、こちらこそ。」
「また会えるかな?」
「機会があれば」
断られちゃったか。とその人は笑う。事実なので否定はしない。だってたぶんそろそろ来るもん。そう考えると気分が上がっていく。はやく、はやくこい。そう思いながらいつもの方向をちらちらとみる。じらされてる気分になって今度は機嫌が悪くなっていく。ぶすっと拗ねているとご機嫌斜めになってるね。といってその人は笑う。
「おい」
その声を聞いた瞬間ぶすっとした顔で振り返る。迎えに来てやったのになんでそんな顔してんだ。そういって倉持は私の鼻をつまむ。だって遅いんだもん。なんて言わないけどふんと鼻を鳴らして怒ってるよアピールしたらいつもわしゃわしゃと撫でてくれるからそれで許すことにする。
じゃ、お迎え来たから帰るね。と驚いている男の子たちを横目に倉持の手を握って朝来た道を反対からあるいていく。
「お前いつもにたりよったりな男が傍にいるよな」
「素朴そうで、やさしそうな人?」
「狙ってやってんのかよ。こぇ」
「女は魔女だって言ったでしょ?」
今日も私の隣にはコイビトじゃない恋人以上の彼がいる。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -