社会人になって、俺は社会人野球をしながら普通に会社員として働いていた。プロになるなんて自分の実力じゃ無理なことはわかってたし今に不満はない。平均より少し上の収入。リッチも悪くないマンション。周囲との関係も良好。野球だってまだまだ成長中だ。それなりに忙しくてもかなり充実してる。ただ一つこの生活に問題があるとすればこの女だろう。
金丸くんやい。なんだよ。みかんが実家から届いたので食べませんか?みかんって昔からお前がこの時期になると学校に持ってきてたやつか?そうそう。確かにあれうまかったよな・・・。まぁ、食べ物に罪はない。ん。もらう。というと何個いる?とダンボール箱を持ってこられた。何だその量?!と驚くと大丈夫。あと3箱あるよ。といわれたが何が大丈夫なんだよ?!絶対ずれてんだろお前の心配してるところ!!こんだけのみかんどうやって処分するんだよ?!食べるんだよ?ほかに何に使う気?やだ、もしかしてみかんプレイでもするの・・・?しねぇよ!つかなんだよそれ?!ヤってる最中にみかんを食べ続けるってプレイ?噎せ返んだろなそれ。じゃなくてその量を食べきれないだろって話だよ。それは私に任せて。自宅警備という名の仕事の最中にしっかりとみかん処理という仕事もこなすから。そんな情けない役職に就くような。と言いたいがそれが何度も言ってる言葉で、聞く耳を持たないことはじゅうじゅう承知しているのでやめた。無駄なことをするような人間じゃねぇよ俺は。
そんなこいつも別にニートってわけじゃない。どうやって稼いでるのかは定かじゃねぇが、金は案外俺より持ってる。家賃食費光熱費、その他もろもろちゃんと割り勘だ。物によってはコイツの方が多く払ってる。例えば電化製品が壊れたりなんかすれば次の日には新しいものと取り替えられている。そんなこと普通なら不可能なのにどこのつながりかで無理やり頼んでるらしい。一度だけ運んできて設定してくれた人を見たがそいつは帰る時までカンカンに怒っていた。一言も発さずに黙々と作業をし、出張代の請求書を渡し、それになまえがサインをするとさっさと帰っていった。最後まで手伝うことも、お茶一つ出すこともなくなまえはただいつものように布団の上に寝そべっていた。むしろ俺のほうが気を使った。あと電化製品の料金とか半分払うといったが値段を覚えてないと言われどうしようもなかった。
なまえは家からほとんどでない。どうしても、どうしても本当に必要な時だけだ。その必要な時っていうのが自分の買いだめしている酒がなくなった時だけだ。一度に大量に飲むわけじゃないが、ほぼ毎日ひと缶は飲んでいる。それが生きる活力だ。なんて前に話していたが俺からすればアホらしい。だがほんとに酒の切れていた日、同じマンション内で火事が起きて消防車が来ていた。会社から帰った俺はその光景に目を見開き、こいつの存在を慌てて探す。けど周辺のどこにもおらず、慌てて電話をかけてどこにいるかとうともう少しでマンションの玄関フロアにつくと言われた。言っておくがその時点で消火なんてされていない。むしろもくもくと煙が上がっていた。なんでこの電話の向こうのやつはこんなにのんきなんだ。しばらくするとこどもを抱えたなまえが入口から出てきて慌てて消防士たちが駆け寄る。身の安全確認と子供の母親が泣きながらお礼を言いに来た。その母親と消防士に向かって言った言葉はお酒買いに行くんでどいてください。だった。ああ、こいつ本物の馬鹿だ。その時俺はコイツがどれだけ危ない人間なのか初めて本当の意味で理解したのだ。のんきにおかえり金丸―!お酒のストック切れてるよ?なんで買ってないの?おかげで家の外に出る羽目になったじゃんか。なんて言われたとき一発殴った俺は間違っていない。そのあとその子供の母親からはお礼にと大量にお酒を頂き、人助けはよきかな。なんてあいつは笑っていた。むしろもう一発殴っとけばよかったかもしれない。
「お前、家の中だけでの生活って飽きないのかよ」
「飽きないよ。だって毎日発見がいっぱいあるじゃん」
「発見・・・?」
「タンスの引き出しの下に敷かれたエロ本とか、冷蔵庫の後ろに住んでたゴキブリとか。半年前に賞味期限が切れたはちみつとか」
「なにとんでもなく恐ろしいものばっか発見してんだよ?!つか人のタンス勝手に漁るな!」
「はっはっは。鍵を閉めていないのが悪いんだよ金丸くん。」
タンスに鍵なんか付けるかボケ!と一発殴るとアイタタ。といいながら頭を押さえる。しかもあの笑い方高校時代のとある人を思い出した。天才イケメン捕手さまと騒がれてたひとつ上の先輩のことを。あんま思い出しても絶対にいいことにはならないけどな。あの人
ああ、そういえば金丸。今度はなんだよ?!と聞き返すのと同時に家のチャイムが鳴る。こんな時間に誰だ。そう思いながら玄関に行き、覗き穴で誰か確認すると俺は目を見開いて硬直する。先ほど話題に出た人と俺の同期で一番うるさい奴。その他もろもろが見える。後ろから高校時代の先輩が今晩遊びに来るって今朝電話があったよ。なんてのんきになまえは教えてくれた。さぁ、この同居人によって散らかされたこの家を俺一人で何分でキレイにできるか。とりあえずそのことだけを考えた。


俺を苦労人させる同居人

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