「倉持のせいで私まで怒られたじゃない!」
「人にせいにすんなよな。そういうのよくねーぞ」
「あんたが人から借りたものさっさと返しに来ないからでしょ!!」
この男、倉持洋一とは高校入ってすぐに知り合った。席もとなりだったので案外早く仲良くなった。倉持は野球部で、瞬足の足を持っているらしい。後輩からは豹とかなんだとか言われているそうだ。見た目はヤンキーで怖いけど、中身はいいやつなんだって知ってから私はこいつとよく一緒にいるようになっていた。だがそれは高一までだ。学年が上がり、クラスはバラバラ。お互いに別々の友人ができた。いや、倉持には御幸くんとやらしかいないらしいが。接点も減っていく。そんな唯一の接点は彼が忘れ物をしたとき私に借りに来る時だけだ。最初のほうこそちゃんと返しに来てたのになぜか最近は私が取りに来るまで返さない。こいつ、舐めてるのかな。おかげで私先生に怒られてばっかなんだけど。今日も今日とてそのために昼休み足を運ぶとこいつは堂々と人のせいにした。もう貸さない!というといや、お前は絶対かすから大丈夫だ。なんて言われるから余計に腹が立つ。それはあんたがほんとに困った顔をわざとするからでしょ!!だいたい、チームの人に忘れ物くらい借りに行ったらいいじゃない。そう言いながらも私は持ってきたお弁当を机の上において倉持と向き合う形でご飯を食べる。今更教室に戻ってもきっとみんなの方が先に食べ終わっておしゃべりの仲間はずれになってしまう。それならいっそのことこいつと食べたほうがマシってものだ。ふたりぼっちだからお互いしか話す相手いないし。
「そういやさ、俺お前に大事な話あんだよ」
「なんでいきなりそういうこと言い出すかな。前ぶりしてよ」
「俺さ、高一のときからお前のこと好きなんだわ」
いきなりの発言に一瞬息をするのも忘れて倉持をまじまじと見た。今この人なんて言ったのかな。いや、たぶん耳がおかしくなって幻聴聞いたんだよ。あー、疲れがたまってるんだわ私。今日は早く寝よ。
「結構余裕あったんだけどよ。いきなりお前が告白されたって話御幸から聞いてよ。あ、御幸は俺の気持ち知ってんぞ。だから情報くれんだ。まぁ、そんなつもりじゃなくてただの面白半分だけどな。あいつは」
いやそんな情報どうでもいい。ほんとに一度黙って欲しい。ほんとに黙れ。意味がわからない。なんでいきなりこんな話になってるの。前ぶりしてよ。大事な話があるとか。いや、してたわ。してたけどこの空気で言うか普通?言わないだろ。雰囲気の欠片もないよ!なんで今そんなこと言おうと思った。ちょっと冷静になろうよ。ここ教室だよ。恥ずかしくないのか。クラスの数人聞き耳立ててるよ。
「ちなみにこのクラスでも結構の奴が知ってっからな。俺結構わかりやすくアプローチしてんのに気づかねーんだよ。俺の好きな奴バカだからさ」
「あんたにバカとか言われたくない!成績勝ってるもんね!」
「よし、俺がちゃんとお前が好きって認めたな。お前のことだから否定しようとしてたんどうせ」
「え、あ、いやその・・・」
「今更逃がさねぇよ」
そう言って倉持は私のことをまっすぐと見つめる。だめだ。ここにいたらダメだ。バクバクと心臓がせわしなく動く。だめだ。逃げなきゃ。私は慌てて立ち上がって教室を飛び出す。後ろから倉持がなにやら数字を数える声がする。いーち、にー、って鬼ごっこか!いや、そんなこと言ってられないって!本気で逃げないと私捕まるし。とりあえず、えっと、えっと。何も考えずに走っているとすでに倉持が迫ってきているのがわかった。慌てて本能に従うように私は上の階に逃げ込む。そして屋上の扉を手にかけて入った瞬間、耳元で艶やかな声が響いた
「捕まえた」

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