「もうさぁ。なんなのあいつ。なんであんな健気なわけ?」
「お前のせいだろ」
朝からニヤニヤしたり落ち込んだり激しい奴だな。なんて思ってるといきなり昨晩もなと話したことを話された。そんな風に言わせてるのはお前自身だろ。つか俺だってそんなことなったらあいつの言うとおり違うやつすすめる。けどきっとあいつはそれを受け入れないだろう。何があっても。たとえ御幸が全て悪くても。
「野球のためにあいつのこと捨てるなんか嫌だな・・・・」
「んなことしてるうちに誰かに取られっかもな」
「お前が言うと現実的になるからやめて」
「お前がどうかは知らねぇけどあいつはお前以外にいこうとはしねーよ」
少なくとも、お前が俺のことを好きでいるなって言うまではきっと。あいつは言葉通り素直に好きでいるんだろう。汚い駆け引きとかもなしで、ただひたすらに好きでいるんだろう。それは少し羨ましいとさえ思えてくる。素直に好きと言えることが。ただ可哀想だとも思う。こんな奴に好かれたことも、好きになったことも。俺はたしかに御幸を勧めた。それは自分の安心のためだ。御幸なら何かあったときすぐわかる。何かあればすぐに手をかせる。殴ってやれる。と思ったからだ。けどあいつは何かあったとしてもそうそう言わないだろう。俺にも、沢村にも誰にも隠して一人背負っていくんだろう。璃奈のときもそうだったように・・・・

「は?どっからそんな自信来るんだよ。つかぎゃくになんだったら別れるんだよ」
「・・・私より大事なものと天秤に図るとき、かな。」
「なんだそれ?」
「あとは御幸が記憶を失って私のことを忘れた時とか」

ふと前にした会話を思い出す。そういや俺にも似たような事を言ってたな。あれはなんの冗談かと思えば本気で思ってることだったのか。なぁ、お前はさ。なんでそんな聞き分けいいんだよ。御幸じゃねーけど俺だってもっとわがままを言えばいいと思う。それが怖いと言うなら御幸とやっていくのはやっぱりやめるべきだ。御幸のいいとこなんて顔と金しかねーんだから。あいつはどっちの目的でもねーし。性格悪い。嫉妬深い。そくばく激しい。そんな三拍子の揃った男だぞ。こいつは。
「あいつ、お前のどこ好きになったんだろな」
「は?」
「俺には理解できねーわ。今色々と考えてみたけどよ。俺が女ならお前はねーわ。金以外の目的で付き合う理由」
ひでぇな。おい。とか言いながらも御幸はけらけらと笑う。笑えるのは今そのたいていのやつが目的とするものを求めないやつにであって、そいつを好きになって、好きになってもらえたからだ。それまでなら笑いながら冷めた目をしてただろう。
「俺もそれは思うけど」
けど、今更放してやるきねーんだわ。俺。そういって笑う御幸の尻にタイキックを食らわせた。


望まないきみと反対の俺


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