栄純くん。そう言って笑うもなさんが俺は好きだ。ニコニコっていつもしてて見てるだけで安心する。姉ちゃんみたいな、母親のような、そんな存在。そんな人と、高校時代も、今も一緒のチームにいる男が恋人になった。確かに前からそんな雰囲気はあった。本人たち無自覚(いや。御幸はわかってんだろうな)なスキンシップ。正直うらやましいとさえ思ったことがある。もなさんは誰にでも平等的だ。俺にも降谷にも、春っちにも。先輩たちのことだってしたってて、特に髭先輩なんか懐かれてると思う。けど、御幸はいつだって特別だった。いや、もっち先輩も結構特別扱いにいるけどそれ以上に御幸は特別だった。不安定になるといつだって支えに来て笑顔を向ける。すんげぇお互いが大事にしてるんだなって見てるだけで分かった。
「けどやっぱりな・・・・」
あんまりいい気分じゃない。御幸ともなさんが恋人になるというのは。だってそれじゃ俺ともなさんとの時間が減るかも知れない。向けられる好感が御幸に増えおれのが減るかも知れない。そう思うと嬉しくない。それは降谷も同じ気持ちだった。春っちは御幸のせいでなにか起きるんじゃないかって危惧してるみたいだけどあの人に限ってとりあえず浮気騒動だけはない。だってもうそりゃ誰が見てもわかるくらい、あの人のこと愛してんだから。もしそんな騒動があったら絶対うそだ。そう俺は確信持って言える。
「あのね、それでね」
もなさんは最近ずっと自分の尊敬する人について話してくれる。その人からもらったサイン入りの料理本とかはずっと大切に持ってるらしい。その人の事を話すもなさんはすごく嬉しそうでまるで大好きな親の話をしているようだった。御幸もいってたけど、その話をするときのもなさんはかわいい。いつものお姉さん。じゃなくて、ちょっと幼い姿。それが見たくて俺は何度もその話を聞いた。もう先輩たちにも耳にタコってくらい話してるのに話し続けるくらい嬉しいんだろうな・・・。俺が、プロになれた時みたいに
「もなさんってシーズン中寂しくないんすか?」
「え?」
「だって御幸いないし。家一人っすよね?」
俺がそう聞くともなさんは少し困った顔をして内緒だよ?と首をかしげる。俺が頷けば素直にさみしいの。と言った。だって、ずっとずっと御幸いるときはべたべたなのに急にそれがなくなるし。もうほんとにさみしいの。でもね、そんなこと言えるわけもないし、言いたくない。でも栄純くんと暁くんが来てくれたりするから今はいくぶんかまし。ふたりが来てくれてる時はすごく楽しいよ。その言葉を聞いて俺も嬉しくなる。
「ぶっちゃけ御幸うっとおしくないんすか?」
「強いて言うならもう少し大人しい男の子になってくれると嬉しいかな。」
「おとなしい男の子?」
ううん、なんでもないの。といってもなさんははぐらかした。それを倉持先輩に話すとすぐに御幸を蹴飛ばしに行く。結局俺にはわからないままだった。


ちょっと思うところもあるのです。


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