「なぁ、もなこんなんつくれっか?」
「どれどれ。うん。材料あればできるね」
「じゃ、次の時頼んだ」
「りょうかい。」
「もなさん!おれ今日の晩飯チーズ入りのハンバーグがいいです」
「はーい。後簡単なおかずも作っちゃうね」
いつ日かもなは沢村と一緒に俺の家に来て飯を作ったりするようになった。3人で騒いで酒飲んで、いつの間にか寝てる。朝起きたらいつの間にか朝食準備されててもうお昼だよ。なんて俺たちに声をかけてた。そんなことが何回もあるうちに飯には登板ができた。でももなだけで泊まる時はいつももなが飯は担当してた。最初こそ女ひとり、しかも御幸のお気に入りを家に泊めたことにやっちまった。とか思ってたのにだんだんとそれが当たり前となって、今では全く抵抗がない。まぁそれは俺があいつのことを女としてみていない証拠でもあった。御幸も俺の所なら、と何かを言うこともなかった。
もなには難点的な性格があった。それは頼まれれば断れない。というものだ。変な勧誘とかは断れるくせに知り合いとかに頼みごとをされるとどうしても安請け合いしちまう。そのくせ変なところまっすぐ硬い芯があるからよくわかんねぇ。あ、倉持がいってたおつまみできたよ。次に泊まりに来たときもなは約束通り俺が頼んだつまみを作ってくれた。それはやっぱりうまい。こんだけ美味かったら店できんだろ。と俺が言ってももなは困ったように笑うだけだった。変なとこ現実しか見ない。たしかに経営とか難しいだろうけどよ、ほんとにもなの飯はうまい。菓子だってできる。だから店開いたってうまくやっていけると思うけどな。もなの中で自分の評価はかなり低い。たしかに外見とか考えると目立つものは何もない。でももなには特別な才能が有る。上手くはいえねーけど、こう。人のことを落ち着かせたり、安心感を与えたりする。そんな感じの。この関係を惜しいと思わせるくらい。
「なぁ、もな・・・・」
「なに?」
「もしさ、俺が超有名人になったらどうする?」
「サインもらって売りさばく。」
そう即答された。だよな。まぁ当たり前の話だ。俺は何を期待してたんだ。自分に呆れてしまう。こいつなら、もっと違う言葉が聞けるんじゃないかって思ってた。まぁ、イサギいいけどな。表面上取り繕って、あとからせがんでくるやつよりは。やっぱ、このままバレルまで黙ってるか。バレた時、全部話して縁きっちまえばいいんだから。少し、胸が傷むような感覚には見て見ぬふりだ。
「金持ちになったらおごってやるよ」
「それはいらない。」
「は?」
予想外の返答に俺が間抜けな顔になるともなはけらけらと笑い顔マヌケ。といった。いや、そうもなるだろ。なんで即答でその答えになんだよ。おかしいだろおい。おごってやるって。いい。てかそんなことされたら倉持と縁切るね。確実に。は?意味分かんねぇ。そういう時はおごってもらえばいいだろ?金持ってる奴に。・・・。中学の時。は?勉強嫌いな子がいてさ。ほとんど学校来なかったんだ。中2とかはもう、半分来たかどうか。何の話だよ?いいから聞いてよ。あまりにもなが真剣な顔をするから黙って頷いた。3年なんて両手で数えれるくらいだった。最初その子は私と同じグループにいたの。わたしはそのこと中学からの仲だったけど小学校からつるんでる子もいてんだ。わたしよりそのこのほうが何倍も仲が良かった。私も仲良くなりたいなって思った。しばらくして漫画かし合ったりしてるうちに仲良くなった。不登校になってからも何回も迎えに行ったりしたの。そのときは一応来てくれた。でもさ、迎えに行かなかったら来なかったんだよね。私も受験生になって、家のことでもいろいろあって、あんまり余裕なくてさ、自分に。それから迎えに行かなくなったらほんとに来なくて、さ。なんかショックだった。休日に部活のない日にそのグループで集まって遊ぶことになったの。そしたらその子いなくてさ。私何も分からずあれ?あの子は?っていっちゃったんだよ。そしたらみんなが黙ってさ、一人の子が私の頭軽く叩いたの。今そのこと言うなって怒られた。つまりその子はグループから除外されちゃったってわけ。自分に利のない子だから。わたしはそれがいつまでも理解できなかった。個人的に今だって連絡とったりはするし、遊んだりもするよ。でも、今でも思うよ。あの時、もっと私が強かったら。あそこで「なんで」って言える人だったらって。ずっと後悔してる。それからずっとずっと思ってるの。利があるないで友達やめたりやったりしたくないって。もう、あんな気持ち、味わいたくない。理不尽な世の中だけど、甘っちょろいこと言ってる自覚もあるけど、それでも、自分だけでもそういうことしない人間でいたい。そういってもなはひとつぶの涙をこぼした


ひとつぶのしずく


prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -