それでね。あのね。ずっと話し続けるもなを横目に俺は目の前に座る御幸にこれこの間も聞いた。と小声で伝えると俺も。と帰ってくる。相当嬉しい話らいいが、いい加減聞き飽きた。俺も。だけどこの話するもなかわいいだよね。お前、そうやって何回聞いたんだよ。もう13回目。お前・・・本物の馬鹿だろ。呆れてため息をつき沢村に興奮した様子で話しているもなみる。まぁ、たしかにいつもより子供っぽいよな。そんなに尊敬する人間がいるっていうのは幸せなことだと思う。俺らにとってのあの監督のように。けどよ、お前ちょっと興奮しすぎだろ。いままで見たことないぞ
「もなさんほんと嬉しそうっすね」
「うん。今度ね、春ちゃんにも会う約束したからその時はるちゃんにも話すんだ」
次の犠牲あいつか。とか思いながら飯食ってとりあえずもなの興奮が少しでも収まるのを待った。収まった頃にはふたり揃って眠ってたけどな。最近のもないきいきしてんだよな。よっぽど嬉しいんだろうけどさ。ちょっとは俺の話もしてくれればいいのに。今までもお前の話なんかほとんどなかっただろ。強いて言うなら愚痴だな。うるさい、過保護、変態、バカ。とかそんなんばっかだろ。ひどい言われよう。事実だと言い返せねぇしな。さすがにひどいんじゃね?倉持くん。ったく、まぁ。お前ら落ち着いてよかったな。一時期はどうなるかと思ったけどよ。前から聞きたかったんだけどさ、倉持。お前、もなのことどう思ってるわけ?は?やけにもなにこだわりあるみてぇだし、そこんとこ教えて。気色悪い笑顔を御幸が浮かべているがこれは牽制だ。俺に対しての。だけどな、もなはおまえのもんじゃねぇよ。俺にとってはもなは妹のような、姉のような、そんなものだ。だからこそ、ほんとなら御幸、お前なんかにやりたくねぇんだよ。けどこいつが無茶しないように見張るためには身近なやつのほうが楽だし、すぐに対処できる。うわ。俺見張られんのかよ。もし、こいつ泣かせやがったらてめぇ容赦しねぇからな。俺も倉持の身内じゃねぇの?高校からの付き合いじゃねぇの。気色悪いこと言うな!
みゆ、き・・・。もなの口からそんな寝言が聞こえると目の前のやつは突然のことに一瞬驚いて顔を手で隠す。不意打ちだな。こりゃ。にやにやと笑ってやると御幸は不機嫌そうな顔をしてそっぽを向く。ほんと、もなの前じゃお前もタダの男かよ。ゆっくりと御幸は立ち上がると眠るもなを抱き上げて寝室に運んでいく。ソファー借りんぞ。おう。寝込みとか俺ら居る前で襲ったりすんなよ。お前、マジでこいつの身内か。大きくため息をつきながら御幸は寝室に消えていった。
押入れから布団を取り出して沢村の上にも一応かけ、俺はお高いソファーに横になってゆっくり目を閉じる。なんとなく、眠る寸前に社会人になってからもなと初めてあったときのことを思い出したような気がした。
あれはオレがプロになって間もない頃。いきなり御幸に連れてこられたのがもなだった。あの頃のもなは俺のことを本気で怖がっていて御幸のとなりからなかなか離れずにずっと俺の方を見ていた。
  こ、こんばんは。久留野もなです。どうぞよろしく
その言葉にオレがおう。よろしく。なんて短く返事を返せばすぐに頬を緩ませあどけなさの残る柔らかい笑みで笑ったんだった。


こんばんはお月さま


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