「いやまさか御幸の恋人がこんないい子だとは思ってなくって最初は警戒しちゃったよ」
「私も御幸関係の女性ってだけでもう絶対危ない人だって思いました」
お互いに最初に思ったことを白状し合うと全く同じことを考えていてついつい笑ってしまう。ほんとに御幸の選ぶ女の人はおっかない人ばっかりだったからね。正直な気持ち関わりたくないと思うだろう。
「てか、倉持ってこんなに過保護なやつだったかしら?」
「うるせぇな。お前が変な登場するからだろ」
「あらまぁ。完全にその子の味方なのね。もしかして、好きなの?」
「こいつはバカだから心配なんだよ。御幸なんか信用ならねぇし」
まぁまぁ、と倉持をなだめながらもう一度璃那さんを見る。そしてもう一度自己紹介をし直した。御幸とお付き合いしてます。とちゃんと伝えると璃那さんは微笑んでそっか。といって御幸の背中をバシバシたたいていい子捕まえたじゃん。という。その表情は安心感と・・・・もう一つ、複雑なものが入り混じっているように見えた。なんだろうか。こう気づかなくていいことに気づいてしまうのは私が馬鹿だからだろうか。気づくべきところにきづけなかったりはするのになぁ。なんて考えていると隣に座っている倉持が心配そうに私の顔を覗き込んだ。ほんとに心配症な人だな。と思い大丈夫。という意味を込めて笑ってみせると少しだけ安心した顔をする。
「つかお前気づいてないだろ」
「何を?」
「この人、哲さんの奥さんだぞ」
哲さんの、奥さん・・・?もう一度自己紹介の時のことを思い出してみる。確か、結城璃那って・・・・。ああ!!驚きのあまり大きな声を上げると倉持がヒャハハと笑う。そ、そうだ。結城ってあの哲さんの名字じゃないか。なんでそんなことにきづけなかったんだ私?!私の驚きっぷりに璃那さんもくすくすと笑う。うう、恥ずかしい・・・・
そのあとから倉持による説明で璃那さんと御幸たちの出会いとかその当時のことを教えてもらった。なんでも御幸がぞっこんだったらしい。けど毎回振られていたとか。そして最後は哲さんと璃那さんが結ばれることでその恋も終わったのだとか。聞いてみるとすごく素敵な物語のように感じた。ほんと変に一途な人だ。かなわないとわかってても追いかける。それがやっぱり御幸という人なんだろうな。倉持はきっとだから心配の必要はないって言いたかったんだろうけど、余計に心配になっちゃったよ。そんな一途に思った人をほんとにすっぱり切れるのかって。
11時くらいに切り上げて帰っていくふたりを見送り、家には私と御幸だけになる。お風呂、入ろっか。沸かしてくるね。そういって私はお風呂のお湯をために脱衣所に行く。扉を閉めてからその場に座り込んだ。ちょっとだけなんか疲れちゃったや。でもお風呂貯めないと。朝のうちに洗っておいたお風呂にボタンを押してお湯を張る。お湯が溜まっていくのを見つめながら自分の弱さに笑ってしまった。御幸のこと信じたい。信じてるからこそ不安だ。私の知ってる御幸は一途で、ひねくれて見えるけど実は真っ直ぐで、無邪気で、野球が大好きな人。そう信じてる。だから怖い。野球のためにいつか捨てられるんじゃないかって。一途に思った人を忘れられるわけないんじゃないかって。でもそうだよね、忘れる必要なんてないよ。だってそれは御幸なんだから。私が好きになった人なんだから。全部全部愛してあげたい。


りんごの果実

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