「その人は御幸の初恋の相手ですよ」
「御幸の、初恋の人・・・」
ばくばくとご飯を食べる栄純くんを見ながらふと前に彼とした会話を思い出す。

泣くほどどうこうってやつ。いきなりどうしたわけ?ただ単に友達との話題で出たから。なるほど。御幸はしたことある?さぁな。こういう反応をするってことはあるんじゃない?あるんでしょ?俺、好きな奴一度しか出来たことねーの。だから比べようがねぇよ。えぇ?!

そういえば前に一度その話を聞いた。聞いたといってもただ一度だけ好きな人がいた。というだけの話だけど。なるほど、あれは璃那さんのことだったんだ。璃那先輩は今俺たちの怪我とかそういう手当の担当者なんですよ。マッサージとかそういうのいっしきしてくれるんですけどね、これがすごい効き目がいいんですよ。一度もなさんも頼んでみたら絶対ききますよ。なんて無邪気にいう栄純くんにありがとうとお礼を言って笑ってみせる。お手洗いに行くわ。といって席を立てトイレの中に入った瞬間大きなため息を漏らした。別に、浮気の心配はしていなかった。御幸のことは信頼してる。もし浮気をしているなら素直にしていると言ってくれるだろう。でも、でもそんなんじゃなくて元好きな人ってどうしたらいいんだろ。元カノのことよりはるかに複雑な気持ちだ。だって、元カノはいっては悪いが御幸に気持ちはなかった。ただその場しのぎというか、暇つぶし程度のような存在だったと思う。だからこそ友人でいた時も不安に思ったことはなかった。けど、璃那さんは違う。御幸が、本気で好きになった人だ。すごい美人で、御幸たちのサポートをしてる人。優しくて、性格だっていい。そんな人が突然目の前に現れて不安に思わないほど、私は出来た人間じゃない。嫉妬だってする。むしろずっとしてる。
そりゃね、御幸には気づかれないようにしてますよ。恥ずかしいし、重たいとか思われたくないし。でもさ、やっぱり気になっちゃうものは気になっちゃうもので。璃那さんを送らせたとき、帰ってきて妙に機嫌いいし。何があったの。って聞きたくたって部外者だから聞けないし。もし変なこと聞いて御幸の傷えぐったらどうしようとか思ったし。どういう関係かすら怖くて聞けなくて、一番素直に気を使わずに教えてくれそうな栄純くんをわざと呼び出して聞き出した。本人にそんな自覚はないと思うけどたぶん倉持あたりなら回りくどくごまかしていたと思う話なのだ。そりゃ私だって友達が同じ状況なら言いたくないもん。けど当事者なら知りたいんです!
栄純くんとわかれて家に帰っても今日は御幸はいない。試合で数日帰らないから。でも、数日って言っていつまでも帰ってこなかったらどうしよう。試合先にはやっぱり璃那さんも行くんだろうな・・・・。そう考えるとまた悲しくなってくる。御幸の馬鹿。なんで、なんでそんなこと言ってくれないのさ。顔パスの時点で信頼してるってのはわかってた。けど自分より信頼されているなんて正直思ってなかった。ずっとずっと御幸と一緒にいたけど私は全然、御幸のこと知らないんだな。改めてそう知るとやっぱり・・・。
「あー、やだもう」


苦しいな、この世界

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