それで何かあった?御幸は車に乗り込んで開口一番にそう言った。何かあったというわけじゃない。ただむしゃくしゃしてどうしようもない感情になったから気持ちに整理をしたかっただけなんだ。そう言うとそれで俺を選ぶ選択にどうやったらなるんだろうね。と本気で理解できないといった顔をしていた。彼自身自分が正直なことしか言わないし、そのほとんどが毒だと分かっているからだろう。だけど毒だって案外人間を助けるものだったりするんだよ。目には目を、毒には毒をとか。良薬口に苦し。なんて言うじゃないか。
それっぽい言葉を考えて適当に言ってみると御幸はそれ意味違うだろ。とケラケラ笑う。わかってるよ。でも似たようなことだって言いたいだけだ。そんなに笑われると恥ずかしいんだけど。どうせ馬鹿ですよ。子供みたいに頬を膨らませると御幸はごめりんことふざけた謝り方をする。ああ、絶対この人ともだちいないよ。
御幸の家にゆくと毎回毎回高そうなマンションでやっぱ別世界の人間だな。なんて思う。中身は別だけどね。やってることはほんと芸能人というやつだ
そういえば久々にであった頃のこと思い出したんだ。と唐突に告げれば御幸もあー。と懐かしそうに明後日を見つめた。そういや一人口説き落とすのに苦労した女がいたな。その人見る目あるね。こんなイケメンなのに?自分で言うとか嫌だ。だって事実だし。そのうち最後の友達倉持くんまでなくすよ。大丈夫。あいつあれで俺のこと大好きだから。ふふ、それ今度言っておこう。え?倉持とあったりするの?んーん。たまにメールして、沢村君に誘われてだいぶ前に一緒にご飯は食べに行ったかな。3人で。お酒は?飲んだ。あぶねぇぞ。男は狼なんだからな。それ御幸が言うとすごく説得力あるね。ひでぇ
いつものくだらない会話。でもそのおかげで少しずつなんだか調子が戻ってくる。
彼の家に着くと厳重な鍵の構造にいつもながら感心した。違うカギ穴3つってどんだけ厳重なんだ。というかこんな高そうなところ入れないでしょ、フロントで引っかかるって。
家についてすぐに風呂入る?と聞かれお願いと頼む。オッケーを元気のいい返事が返ってきて正直なんかぞっとした。こんなに御幸が機嫌いいなんてあっただろうか。
お風呂の自動沸かしボタンをおして戻ってきた御幸になにかあった?と聞けばなんで?と聞き返されたのでが機嫌良すぎて気持ち悪い。とはっきりと感想を述べるともなのせいじゃん。と言われた。え?私なにかしたっけ
「初めてだよね。もなからこうやって会いたいって連絡くれたの」
「まぁ、前に約束したから。気をつけるって」
「そんなことならもっと早く言っときゃよかった。」
「結構前から言われてたよ。幼馴染の人に」
「改善しなかったの?」
「大切な人ほど、なんか難しいんだよね。でも同僚にそれは相手が可哀想だって言われて確かに失礼なことだって思ったから改善した。あのメールがその第一回」
これからもう少し頑張る。と言うと御幸はじゃぁ俺は記念すべき初めての人か。と言ってニヤニヤと笑う。何を言ってるんだか。御幸は私の初めてを結構奪っていると思う
まぁ、初キスは違ったけどね。手をつなぐのも違う。デートも違う。けど結構重要なことは御幸がほとんど奪ってる気がする。
「そういえば御幸なんか女子アナさんと話題になってるね。」
「ああ、あの嘘スキャンダルか。」
「友達とか同僚にもあれでまだろうねって言っておいたよ」
「ちょっとは本当かもとか思わなかったの?」
「だって、彼女が出来たなら家には呼ばないでって約束したじゃない。御幸が約束破るとは思ってないよ」
その程度の信頼はあるんだけど。ちょっと不満げに言うと御幸はまた嬉しそうに笑って私の頭をわしゃわしゃとなでた。そのまま撫でられる手に擦り寄ると今度はぎゅっと抱きしめられる。そして次の瞬間には深いキスをされていた。ああ、全く。彼も寂しがりやなんだなぁ。ぼんやりしてくる頭の片隅でそんなことを思う。
いわゆる彼と私は親友であり、大人の関係だ。恋人なんかじゃない。二十歳を超えてからだったと思う。こんなことを始めたのは。私はむしゃくしゃしてたとき、彼はうまくいかない世の中に腹を立てたとき。合意だったかどうかは微妙なところだったけどそこからこんなこともするようになった。寂しい。そう思う心を少し紛らわすように、お互いの傷を舐め合うようなことをした。これが悪いことかどうかと聞かれれば悪いことなのかもしれない。プロの野球選手と凡人がこんなことをするのだから。それに幼馴染でも一番付き合いの長い子には口を酸っぱくさせるほどこういうことだけはしちゃいけないって中学生の頃から言われていた。あまりに平和ボケをした私のために。
危ないんだから男の家に上がるのも良くない。同棲も結婚前提じゃないならしたらダメだ。デキ婚は絶対許さない。その他もろもろ言われてる
これほんとバレたら絶交されそう。でも、やめられないんだ。寂しくてたまらないの。
「はっ・・・・御幸、お風呂・・・・」
「後でいい。先にこっち」
「今日、きけ、・・んび・・」
「了解。ちゃんと避妊するから」
そう言うと御幸はひょいと簡単に私を抱き上げて寝室に入り私をベッドに落とした。
そういえばせっかくスーパーでお酒買ってきたのに酒盛りできなくなっちゃった。加減してくれないと明日動けなくなるんだけどなぁ。
「余裕だね。」と少し不満そうな声が聞こえたと思ったらすぐに息ができなくなるくらい深いキスをされる

ベッドで窒息


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