扉を開けた瞬間見えたのは。とても綺麗なお姉さんでした。


ただいま。という声におかえりなさい。と返事を返す。リビングに入ってきた御幸にご飯もお風呂も出来てるよというと飯食う。というのでご飯の準備を進めた。今日、お客さんが来たよ。御幸留守ですって言ったら引き返しちゃったけど。あー、ならいいわ。知り合いなら後から連絡来るだろうし。気にすんな。う、うん。わかった。その時はとりあえずそう返したものの、正直私の中では惑いのほうが大きかったのだ。
このマンションはお金を持ってる人が暮らしてる。なのでセキュリティーが結構しっかりしている。普通のマンションの何倍も。でもお金を持ってる、つまり有名人もいたりするらしく、その知り合いをマンションの入口で足止めさせるわけにも行かないので知り合いの人だけ顔パスできるようになってたりする。受付の人に声をかけるとすんなり入れてくれるのだ。私も何度かこの家に住む前にそれをしたことがあったけれどそれはそれは不思議な感覚だ。これぞ有名人。って感じでなんかちょっぴり怖かった。倉持ももちろん顔パスできる。青道の先輩たちもある程度できるらしい。玄関までくればモニターで家の中から誰が来たのか確認できるシステムだ。私は実家のくせで確認することがないので使わないけどそれをこんなにも後悔した日は初めてだった。
今日の夜、仕事から帰ってきて訪れた訪問者は私の知らない人だ。そして女の人だったのだ。同性から見てもきれいだな。って思えるようなお姉さんタイプの人。思わずどきどきしてしまった。でもよく考えてみよう。ここは玄関。下のエントランスホールではないのだ。もう一度言おう玄関なのだ。つまり顔パスができた人間なのだ。つまりは確実に御幸の知り合い。でもそれが女の人というのが初めてなのだ。元カノ?有り得そうで怖い。というか御幸関係の女の人って怖いイメージしかないから怖いのだ。今までビンタされた回数8回。泣き喚かれた回数19回。笑って毒はかれた回数7回。そう。とにかくイメージが悪い。御幸の元カノとか、遊び相手とかとにかく面倒な人が多い。もう少し倉持みたいに選ぶか切り捨てるかして欲しいものだといつも思っていた。それが今回初めて穏便にことが済んだのだ。いきなり現れたその女性は御幸、さんいますか?と訪ねてきて正直に留守にしてます。となんとか返すとそうですか。分かりました。また日を改めます。といって去って行かれたのだ。もうそれはそれは恐ろしく思った。
でも御幸はこんな調子だしなぁ。浮気を疑っているわけでは微塵もないのだが、顔パスできたという親しさにも正直驚いてる。わたしの知ってる御幸の元カノは顔パスできなかったはずだ。それできれられたことがあったから。なんで自分ができないのにお前が顔パスなんだって。いや、知らないですけど。って答えた時のビンタ。あれは痛かったな。今思い出しても頬がひりひりする気がする。ん。そういえばなんの御用だったんだろあの人。動揺して全然話聞けなかったな。次、次来てくれたときもう少し話せるといいな。
なんて思っていると本当に数日後またあの女の人は私の前に現れた。私を見た女の人は驚いたように目を見開いて固まっている。そしてすいません。といって去っていこうとしたところを慌てて呼び止めた。
「あの、よかったら家上がってください。御幸、もう少しで帰ってくると思うので」
私がそう言うと女の人はじゃぁ、遠慮なく。といって家の中に上がってくれた。さて、御幸は今日は何時に帰ってくるだろうか。連絡のない携帯に溜息を漏らす


携帯は震えない

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