「好きだ」
その一言で私は硬直してしまう。いつもの冗談だ。そう思いたいのにこの抱きしめられる腕が冗談じゃないというかのように強く抱きしめる。御幸、とその名を呼びたくても呼べない。喉がカラカラする。息が、苦しい
「お前が、もなのことが本気で好きだ」
繰り返される告白に冗談でしょ。なんて言えるわけもない。そこまで無神経にはなれない。だからといって受け止めるわけにもいかない。何のために、何のためにこんな関係になったのか。それは御幸を支えるため。それ以外の何者でもないし、なにものにもなってはいけない。だから、返す言葉は決まってる。けど、言葉が出ない。今までにないほど苦しい
もな。もな。何度も呼ばれる自分の名前を聞くたびに胸が締め付けられる。ああ、これ以上聞いてられない。
「ゴメンなさい・・・っ。その気持ちには、応えられない」
もう一度謝っても御幸は抱きしめる腕を振りほどいたりしない。ただひたすら私の名前を呼び続ける。もう、もう聞きたくない。もう呼ばないで。そんなことも言えるはずなく、ただひたすら御幸が落ち着くのを待ち続けた。

「御幸に告られたんだってな」
「人の仕事場まで迎えに来たから何かと思えばそれですか」
次の日仕事終わりに私の仕事場までやってきた倉持は問答無用で私の手を引っ張って歩き出した。そして私が今一番触れたくない話題を出してくるのだからタチが悪い。どうせ御幸から聞いたんでしょうけどね。こいつに言わなくてもいいじゃないか。
「ねぇ、倉持」
「あ?」
「御幸は今まで・・・・どんな気持ちで私と一緒にいたのかな・・・?」
思い返せば、何度も御幸に告白らしきものはされた。でもいつも冗談だと思ってた。ほんとに御幸だって冗談みたいに言うから。倉持の家に連れてこられてソファーに座らさられると倉持はココア入れてくる。といってキッチンに消えてしまう。それに返事もできずに何度も何度もあの時のことを思い出す。痛いくらいに抱きしめられた。息が苦しかった。それは強く抱きしめられたからじゃない。ほんとは、ほんとは・・・・わたし。御幸が私になにを求めているのかわからなくなって、怖くなったの。御幸の望んでいたことは違ったはずなのに、いつのまにか変わっていて。それがただ怖かったの。変わっていくのが怖かったの。だけどわたしほんとは・・・ほんとは嬉しくてたまらなかったんだ。あの時、御幸の言葉を聞いて。泣けそうなほど嬉しくて苦しくて、だから息さえもできなかった。でも私なんかが。って思って、素直になれなくて。御幸を傷つけてしまった。そんな私に自分の気持ちを言う資格なんてないよ。一人逃げ出して、ずるして。最低だ。
コトン。と音がして顔を少し上げると目の前にはココアが置かれる。倉持はどかっと隣に座って俺はな。と話し出す。俺はずっとお前らがさっさとくっつけばいいって思ってる。どっちもお互いのこと好きなんだろなって思ってたから。お前の方はつい最近まで確証モテなかったけどよ、御幸のやつなんかは沢村ですらわかるほどわかりやすかった。だけどお前は御幸にたいして曖昧っつうか、優しかったり、厳しかったり。信用してるようなしてないような。なんか中途半端な感じでさ。降谷と沢村は全否定してたけどな。お前を御幸に取られるのが嫌でよ。でもよ、俺は御幸のとなりにお前が並んでるのが一番しっくりくんだよ。御幸はずっとお前のことが好きだった。たしかに遊んだた時期もあったけどよ、でもお前の対しては一途だ。気持ち悪いくらいに。それにお前だってそうだよ。何があっても御幸の味方だったろ?この間みたいにジュースぶっかけられても怒らずにさ、逆に御幸のことを心配して。お前だってちゃんと御幸のことが好きだよ。そりゃいきなり告られてびっくりしたのはわかるけどよ。素直に言ってやれよ。あいつ、あれでも結構凹んでんだぞ。ヒャハハ。と最後はいつもの彼の独特の笑い方をして私の頭を撫でる。それが妙に落ち着かせてくれて荒れていた自分の中が静まっていくのを感じた。
今ならちゃんと話せるかも知れない。ホントの気持ちを
「あのね、倉持。私は倉持のことが、好きだったの」
「へ?」
いい加減、ホントの事を話そうか。私の二回目の恋の話


かくれんぼ

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