あれから更に新入りちゃんに嫌われ、面倒だなぁ。とは思うけど大して気にならず毎日を過ごしている。同僚や後輩君には心配されるけどほんとに気にならないのだ。だってこの程度のことなら学生時代に経験済みなのだからね。なんとなく仲良くなった男子に彼女がいて、その彼女に恨まれる。なんてことは何度か体験した。仲良くなった程度でそこまで嫉妬するのかとあの頃は驚いたけどおかげでいろいろ免疫は付いた。ある程度の悪口気にならない。それに私にはひとつだけ明確な夢があるのでそれを叶えるまで負けるわけにはいかないのだ。
「もなさんの尊敬する人って誰ですか?」
栄純くんたちとご飯を食べに行くことになった日。突然そんなことを聞かれた。一瞬驚いて黙ったけど決まっていた。奈賀さん。はっきりそう答えると全員が誰だ?と首をかしげる。その人は私の高校時代出会ったすごい人だった。県の調理師会長で、県の祭典をたまたま学校で手伝うことになったとき出会った人。料理とは何か、料理人とは何か。人生とは何か。自分の経験を含みながら語ってくれた。私がこの世界に入る最後の後押しをした人だった。
「だから、いつかその人のお手伝いをしたいんだ。その人その祭典のときに施設の子供たちと出会ってね、力になりたいって言ってて。今はお店を弟子に任せてその子達のための就職先とかいろいろやってるんだ」
「へー。すごい人ですね」
「うん。すっごい人だよ。もうほんと、憧れの人」
ちょっと照れくさくなって笑ってごまかしてしまう。でも本当にいつかは恩返しをしたい。あなたのおかげでここまでこれたんだってお礼を言いたい。そういつも思ってた。でもまだまだ私なんかには何もできなくて、悔しい気持ちもある。焦ったっていいことはない。そうわかっていてもちょっと焦りはある。だって、奈賀さんは年齢も年齢だから、いつまでも時間があるわけじゃない。でもだからといって焦ってもいいことはない。でもでも。と同じことばかり繰り返して考えるときは大概御幸にあってたっけ。なんだか冷静になれるから。
「もなさんが料理教室の先生やってるのってだからですか?」
「あ、バレちゃった?そうなんだよね。全然あんな人みたいにはなれないけどさ、目標?みたいな」
また照れくさくなって笑って誤魔化そうとすると栄純くんは純粋な眼差しでいい人に出会えましたね!なんていうからもっと気恥ずかしい。けど素直に頷いた。だって本当にあの出会いは私を変えたから。よく芸能人である運命の人。とかいって自分の恩人に挨拶をするような番組で私が誰と会いたいと聞かれればあの人を言うだろうから。
「でもいい出会いって意味じゃ、栄純くんとの出会いもかな」
「へ?俺ですか?」
「そうそう。だって栄純くんのおかげでみんなに会えたから。」
ありがとう。とお礼を言うと栄純くんは照れくさそうに笑った


恥ずかしいくないよダーリ

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