私はどうするべきなのだろうか。それがわからずに、とうとうこの日を迎えてしまった。朝からちゃんとおしゃれをして、マンションの下まで降りる。すでに車で迎えに来ていた彼に手を振って助手席に乗り込むとおはよう。とお互いが言って車が動き出す。試合は夜からだから、朝からは少しドライブでもしよう。いきたいところを言って。という彼の提案に乗って少し離れた私の生まれた土地にある海までやってくる。そこは私のお気に入りの場所だった。何かがすごく綺麗というわけじゃないけど、子供の頃からそこはなんとなく落ち着く。それに海の波の音や、潮の匂いは私を落ち着かせてくれた。こんな場所じゃつまらないよね。ごめんね。と謝ると。ううん。ここで君が育ったって言うのがなんか分かる気がする。といって彼は笑った
それから彼のおすすめのカフェに行って一緒にご飯を食べて、お揃いのストラップをお店で買って携帯につけて球場に向かう。私は今日。答えを出さなければならない。彼の気持ちに応えるのかどうか。彼と一緒にいて楽しいし、これからもこんなふうに過ごしたいとは思う。けど、けどそれは恋とは違うってことを分かってる。私が今日決めるのは今の気持ちを忘れて、彼を好きになる努力を続けるか。ここできっぱりと別れを告げるかだ。別れを告げてしまった場合、きっと彼と会うことは二度とないだろう。それはすごくさみしい。でも、だからといって半端な気持ちで答えるわけにはいかない。はっきり、はっきりさせないと。この時間が終わってしまう前に。
もな。名前を呼ばれてはっとして横に座っている彼を見ると優しい顔をして私を見ていた。行こうか。いつの間にか球場近くの駐車場についており、彼はいつものように助手席の扉の前に来てドアを開け、手を貸してくれる。そのまま手をつないで歩き出せば少し気恥ずかしいけど、どこか暖かくて。ふわふわして気持ちになる。これって恋じゃないの?って何度も思った。けど、私はもうすでに知ってる。これ以上の感情を。だから、これを恋と呼ぶことはできなかった。どれだけ口で否定しても、わかってるから。もうほんとうは・・・・。
席に着くとすでに会場は満員となっていた。すごい。と思わずつぶやくと今日は沢村投手が移動して初試合だからね。と教えてくれる。そうか。栄純くん目当ての人ばっかりなんだ。なんとなくそれは嬉しかった。まるで自分の弟が褒められているような気持ちだ。もなは沢村投手のこと結構贔屓してるよね。そうかな?あ、でもね。ホントに可愛いの。栄純くん。すっごい素直だしね。行動一つがもうほんと。あと春市くんとか。春市くん?小湊春市くん。あと降谷暁くん。もうほんと3人は天使そのものだよ!いつになくテンションの上がっている私に彼は少し驚いた顔をしてくすりと笑う。そういう顔もするんだね。なんて言われたらちょっと恥ずかしい。子供っぽかったよね。ダメダメ。外なんだからもっとちゃんとしないと。
試合が始まると彼は握っている手に少しだけ力を入れる。最初に栄純くんの紹介が少しだけあって、それから試合が始まった。もちろん捕手をしているのは御幸。初回から栄純くんのキレのいいボールが走る。最初の打者に打たせてとらせ。二人目の打者も同じようにアウトを取る。そして最後の打者を三振に収めた。おーしおしおし!と栄純くんの大きな声が球場に響く。その声に反応して観客も大きな声を上げた。わたしも思わず立ち上がって飛び跳ねてしまう。彼にこらこら。といって席に座り直させられるけどでも抑えきれないくらいの気持ちなんだもん。だって、栄純くんすごいじゃない!カッコいい!興奮しきった私を見て彼はそっと肩に触れて自分の方に抱き寄せた。今度は恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯いてしまう。こういうの慣れてないんです!!文句を言うおうと彼を見ればホントに優しい顔をして私を見るから何も言えなかった。すごく、すごく優しくて。温かい目をしているのに、どこか寂しそうに見えるのは気のせいなのかな。
歓声が沸き起こる中。私は寂しそうな彼の腕の中に包まれた


コトバも声もないけれど

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