恋人なんていつになったらできるのだろうか。なんて思っていたらこんなにも早く出来てしまった。けどその恋人は好きとかそういうのではなく、仕方なく出来た恋人だった。よく小説とかである無理やり恋人になりました。みたいな設定に近いかも知れない。でも、そんな甘い関係を築けるような人じゃない。わがまま坊ちゃんはイケメンとかじゃないし、惹かれるところが何もない。はっきりいって迷惑だった。仕事帰りに迎えには来るし、この間は私生活まで干渉してきた。それはもう腹をたててすぐさま追い払ったのだけど御幸にこのことを知られてしまい正直焦った。だって、私は散々御幸に恋人ができたら教えるように言っていたのに私はずっと黙ってたんだ。ちゃんとした恋人じゃなくても隠していた。その後ろめたさ。そしてこの関係を知られてしまえば絶対に心配させるとわかっているから理由も言えなかった。もちろん御幸は怒った。そんなのわかってた。ちゃんと家だって出てけと言われれば出て行くつもりだった。寂しい、とか身勝手な気持ちを抱いたとしても。でも御幸はここにいろと言ってくれた。そして私はその言葉を受け入れて今もまだこの家にいる。絶対、ダメなのに。私はまた結局御幸に甘えてしまっていた。そんな自分が嫌で仕方がないのに、ここは居心地がよくてわがままになってしまう。恋人がいるのに、このままここにいたいなんて・・・・。最低だよ、私ってば。いつの間にか私の異性交遊はこんなにも乱れていたらしい。いや、そんなのずっと前からか。だって、恋人でもない人に抱かれているのは紛れもない事実なのだから。
私の初めての恋人となった男はこの間のお坊ちゃんくんだった。一度断ったもののしつこくやってきた。どうやら断られると思っていなかったらしい。同僚たちも呆れた顔をして私に同情する。最初のうちは適当に対応していたもののあるとき忙しい時にあれはやってきた。そしてあまりに邪魔するものだから言ってしまったのだ。今すぐ邪魔せずかえるなら恋人でもなんでもなってあげるからかえって!気が付いたらそう叫んでいたのだ。日頃の疲れがたまっていたのだと思うけど、まさかこんなこと言ってしまうとは自分でも思っていなかった。追い詰められると人間は恐ろしいものだ。そしてその結果私は彼の恋人になることになってしまった。彼は怒られたことがあまりないらしく私が珍しかったようでとにかく私に付きまとう。そして私がダメだといったことは素直に従った。悪い人ではない、のだと思う。けど、でも私には恋愛対象にならなかった。だって、どうしようもないほど違うんだ。好きっていう気持ちと。私はタダ、一緒にいて自然と笑えるような人と恋人になりたい。彼のように気を使うことしかできない人ではどう頑張ってもそういう目では見れないのだ。自分の子供が恋愛対象にならないのと同じ。
「もな!今度の土曜日野球の試合があってな。それに一緒に行かないか?」
「へ?なんで野球?」
仕事後の少しの間のあって話していると彼はそんなことを言い出した。この人野球なんて好きだっただろうか。首をかしげると彼は顔を赤くして君が好きだと聞いたものだから。なんていう。誰に聞いたの?と聞くと私と同じ職場の人。それ以上は秘密だと言われた。だけど職場の人にそんなことを言った記憶はない。みんなきっと適当に教えたのだろう。これなんだけど。そういって渡されたチケット。今週の土曜日は確か御幸も留守のはずだ。こんな関係だけどあまりにも無下にするのは気が引ける。だから私はいいよ。と答えた。そしたら本当に嬉しそうに笑うものだから胸が痛む。最初はきっと愛じゃなかった。この人が私に向ける感情は。ただの一方的な愛を欲しさに私にいいよったのだ。だけど次第にそれが変わりつつあることに私は気づいた。彼は私をだんだんとホントの意味で好きになり始めている。私にはそんな気持ちは欠片もないというのに。
「ありがとうもな。僕は君と一緒にいられて幸せだ!本当にありがとう」
そんなこと言わないで。なんて言えず私は曖昧に笑うのだった

傷つけたくない、弱虫なのです

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